横手統制電話中継所事件と配慮の無い時季変更権の行使

(最三小判昭62.9.22)

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今回も弘前電報電話局事件と似たような、

使用者側の代替勤務者の確保などの配慮をせずに、

時季変更権を行使した事案です。

【事件の概要】


Ⅹは、昭和53年5月17日に、同月19日と20日の両日につき、

年次有給休暇の時季指定をしました。

このうちの1日は、勤務割においてXが1人で勤務することになっていました。

勤務先のYでは、以前から最低配置人員配置時であっても、

勤務予定者の年次有給休暇の取得については、できるだけの便宜を図ってきていました。

Xの上司であるAは、Xが成田空港の再開港の当日に予定されていた開港反対現地集会に参加するため、

年次有給休暇の時季指定をしたものと考えて、代替勤務者を確保すれば、

Xに年次有給休暇を取得させることはできるが、

そこまでしてXに年次有給休暇を取得させることはないと判断して、

Xの休暇取得によって要員無配置状態となり、事業の正常な運営を妨げるとして、

時季変更権を行使しました。

しかし、Xは当日出勤しなかったため、欠勤を理由に戒告処分にされ、

欠勤分の賃金を差し引かれました。

そこで、Xは、戒告処分の無効と賃金の支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


労働基準法39条3項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たって、

代替勤務者確保の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、

勤務割による勤務体制がとられている事業場においても、

使用者として通常の配慮をすれば、

代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能であると認められるにもかかわらず、

使用者がそのための配慮をしなかった結果、代替勤務者が配置されなかったときは、

必要配置人員を欠くことをもって、

事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできません。

そして、年次有給休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであって、

それをどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由であるというべきであるから、

代替勤務者を確保して勤務割を変更することが可能な状況にあるにもかかわらず、

休暇の利用目的のいかんによってそのための配慮をせずに時季変更権を行使するということは、

利用目的を考慮して年次有給休暇を与えないということに等しく、許されないものであり、

時季変更権の行使は、結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないものとして、

無効といわなければなりません。

本件についてみると、勤務割による勤務予定日の年次有給休暇の取得についても、

できるだけの便宜を図ってきており、Xが年次有給休暇の時季指定をした日についても、

代替勤務者を確保することが可能な状況にあり、その時に予定されていた職務は、

特殊技能を要しないものに限られていたにもかかわらず、上司Aは、

Xの休暇の利用目的が成田空港開港反対現地集会に参加することにあるものと推測し、

そのために代替勤務者を確保してまでXに年次有給休暇を取得させるのは相当でないと判断して、

そのための配慮をせず、要員無配置状態が生ずることになるとして時季変更権を行使したというのであるから、

それが事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないことは明らかであり、

時季変更権の行使は無効といわなければなりません。

【労働基準法39条(年次有給休暇)】


使用者は、その雇入れ日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

◯2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄の掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

「六箇月経過日から起算した  「労働日」
       継続勤務年数」  

 一年             一労働日
 二年             二労働日
 三年             四労働日
 四年             六労働日
 五年             八労働日
 六年以上           十労働日

◯5 使用者は、前各号の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

【まとめ】


代替勤務者を確保して勤務割を変更することが可能な状況にあるにもかかわらず、

休暇の利用目的によってそのための配慮をせず、

時季変更権の行使をするのは許されません。

結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないので無効です。

【関連判例】


「白石営林署事件と有給休暇」
「此花電報電話局事件と時季変更権」
「弘前電報電話局事件と使用者の配慮」
「時事通信社事件と長期かつ連続の年次有給休暇」
「日本電信電話事件と訓練(研修)期間中の年次有給休暇」
「沼津交通事件と年次有給休暇の取得に対する不利益取扱の禁止」
「津田沼電車区事件と年次有給休暇の成立」