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労働者が生理休暇を取得することにより、
精皆勤手当等の経済的利益を得られない措置を
使用者が採ることは許されるのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、出勤率向上対策として、精皆勤手当を設けることにしました。
Yは、労働組合との間で、「出勤不足日数のない場合は5000円、出勤不足日数1日の場合は3000円、
出勤不足日数2日の場合は1000円、出勤不足日数3日以上の場合は支給しない」という合意をしました。
また、生理休暇取得日数は出勤不足日数に参入することも決めました。
Xらは、生理休暇を取得したため精皆勤手当が減額されました。
そこで、Xらは、減額分の支払を求めて争いました。
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【判決の概要】
労働基準法68条は、所定の要件を備えた女子労働者が生理休暇を請求したときは、
その者を就業させてはならない旨規定しているが、
年次有給休暇については同法39条7項において、
その期間所定の賃金等を支払うべきことが定められているのに対し、
生理休暇についてはそのような規定が置かれていないことを考慮すると、
その趣旨は、当該労働者が生理休暇の請求をすることによりその間の就労義務を免れ、
その労務の不提供につき労働契約上債務不履行の責めを負うことのないことを定めたにとどまり、
生理休暇が有給であることまでをも保障したものではありません。
したがって、生理休暇を取得した労働者は、その間就労していないのであるから、
労使間に特段の合意がない限り、その不就労期間に対応する賃金請求権を有しません。
また、労働基準法12条3項及び同法39条8項によると、
生理休暇は、同法65条所定の産前産後の休業と異なり、
平均賃金の計算や年次有給休暇の基礎となる出勤日の算定について、
特別の扱いを受けるものとはされておらず、これらの規定に徴すると、同法68条は、
使用者に対し生理休暇取得日を出勤扱いにすることまでも義務づけるものではなく、
これを出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは原則として労使間の合意に委ねられています。
ところで、使用者が、労働協約又は労働者との合意により、
労働者が生理休暇を取得し、それが欠勤扱いとされることによって、
何らかの形で経済的利益を得られない結果となるような措置ないし制度を設けたときには、
その内容いかんによっては生理休暇の取得が事実上抑制される場合も起こりうるが、
労働基準法68条の趣旨に照らすと、このような措置ないし制度は、
その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、
生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、
生理休暇の取得を著しく困難とし同法が女子労働者の保護を目的として、
生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものと認められるのでない限り、
これを同条に違反するものとすることはできません。
本件についてみると、Yが精皆勤手当を創設し次いでその金額を2倍に増額したのは、
所定の要件を欠く生理休暇及び自己都合欠勤を減少させて出勤率の向上を図ることを目的としたもので、
生理休暇の取得を一般的に抑制する趣旨に出たものではなく、
また、同手当の算定にあたって、生理休暇の取得日数を出勤不足日数に算入することにより、
労働者が失う経済的利益の程度を勘案しても、このような措置は、生理休暇の取得を著しく困難とし、
労働基準法が女子労働者の保護を目的として生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものとは認められないから、
同法68条に違反するものとはいえません。
【労働基準法68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)】
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
【労働基準法68条の解説】
生理休暇は雇用形態を問わず、アルバイト、パート、正社員など誰でも請求できます。
しかし、ただ生理日だから休むということはできず、
働くことが著しく困難な場合に請求できます。
1日単位でなくても、半日単位でも時間単位でも可能です。
【まとめ】
使用者の採った措置や制度が、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、
生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等を総合して、
生理休暇の取得を著しく困難とし、
同法が女子労働者の保護を目的とした趣旨を失わせるものと認められるのでない限り、
労働基準法に違反するといえず、許されます。
【関連判例】
→「東朋学園事件と賞与支給要件(不利益取扱い)」
→「日本シェーリング事件と不就労時間」
→「エス・ウント・エー事件と年休取得と不利益な取扱い」