スカンジナビア航空事件と変更解約告知

(東京地決平7.4.13)

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新契約締結の申込みをともなった従来の雇用契約の解約、

いわゆる「変更解約告知」のもとでの解雇が有効とされるためには、

どのような要件が必要なのでしょうか。

【事件の概要】


外国の航空会社であるYは、業績不振による経営再建策として、

平成6年6月10日、日本支社の日本人従業員(地上職員・客室乗務員)全員に対し、

早期退職募集と年俸制導入、退職金・労働時間制度の変更、

契約期間の導入等の契約条件変更を伴う再雇用を提案を行い、

応募期限である7月29日までに、

全従業員140名のうち115名は早期退職募集に応じたが、

Xら(9名)を含む25名は応募しませんでした。

Yは、Xらに対して再雇用の場合の新たなポジションと年俸を示した上で、

再度の早期退職と再雇用への応募を促しました。

しかし、Xらがこれに応じなかったため、

Yは、9月30日をもって解雇する旨の解雇予告の意思表示を行いました。

そこで、Xらは、解雇の無効を主張して争いました。

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【判決の概要】


Xらに対する解雇の意思表示は、

要するに、雇用契約で特定された職種等の労働条件を変更するための解約、

換言すれば新契約締結の申込みをともなった従来の雇用契約の解約であって、

いわゆる変更解約告知といわれるものです。

会社と債権者ら従業員との間の雇用契約においては、

職務及び勤務場所が特定されており、

また、賃金及び労働時間等が重要な雇用条件となっていたのであるから、

本件合理化案の実施により各人の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の変更を行うためには、

これらの点について債権者らの同意を得ることが必要であり、

これが得られない以上、

一方的にこれらを不利益に変更することはできない事情にあったというべきです。

しかしながら、労働者の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更が、

会社業務の運営にとって必要不可欠であり、

その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて、

労働条件の変更をともなう新契約締結の申込みが、

それに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ないものと認められ、

かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときは、

会社は新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することができます。

以上によれば、Yが、Xらに対し、職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更をともなう再雇用契約の締結を申し入れたことは、

会社業務の運営にとって必要不可欠であり、

その必要性は右変更によって右各債権者が受ける不利益を上回っているものということができるのであって、

この変更解約告知のされた当時及びこれによる解雇の効力が発生した当時の事情のもとにおいては、

右再雇用の申入れをしなかったXらを解雇することはやむを得ないものであり、

かつ解雇を回避するための努力が十分に尽くされていたものと認められます。

よって、本件変更解約告知は有効であると解するのが相当であり、

Xらに対する解雇は有効であるというべきです。

【まとめ】


労働条件の変更が、会社業務の運営にとって必要不可欠であり、

その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて、

労働条件の変更をともなう新契約締結の申込みが、

それに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ないものと認められ、

かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときは、

会社は新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することができます。

【関連判例】


「高知放送事件と解雇権の濫用」
「ダイハツ工業事件と使用者の懲戒権」