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ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は、
いかなる場合でも有効とみなされるのでしょうか。
【事件の概要】
Yと労働組合との間には、新機械の導入に関し意見の対立がありました。
この間Xは、一部職場の女子従業員に対し職場離脱させたほか、
無届集会をしたこと、更に夏期一時金要求に伴う闘争に関し、
会社役員の入門を阻止したこと等が、会社の職場規律を害するものとされ、
Yにより懲戒解雇されました。
この時、組合委員長、他の組合員も出勤停止、減給、けん責などの処分を受けました。
組合は地労委に不当労働行為を申立て、処分撤回の和解が成立したが、
この和解には和解の成立の日をもってXが退職する旨の規定が含まれていました。
しかし、Xに退職する意思はありませんでした。
組合は、和解案の受諾に、Xのみの退職を承認したのは闘争において、
Xの行き過ぎの行動があったこと、
受諾の趣旨は、これにより会社と組合との闘争を終止させ、
労使間の秩序の改善を意図したものであることなどを背景に、
Xが退職に応じないときは組合から離脱させることも止むを得ないと考えて、
Xを離籍(除名)処分にしました。
Yと組合との間には、
「会社は組合を脱退し、または除名された者を解雇する。」旨のユニオン・ショップ協定が結ばれており、
Yは、この協定に基づきXを解雇しました。
そこで、Xは、解雇の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、
権利の濫用として無効になると解するのが相当です。
ところで、ユニオン・シヨツプ協定は、
労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、
使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより、
間接的に労働組合の組織の拡大強化をはかろうとする制度であり、
このような制度としての正当な機能を果たすものと認められるかぎりにおいてのみ、
その効力を承認することができるものであるから、
ユニオン・シヨツプ協定に基づき使用者が労働組合に対し解雇義務を負うのは、
当該労働者が正当な理由がないのに労働組合に加入しないために組合員たる資格を取得せず又は、
労働組合から有効に脱退し若しくは除名されて組合員たる資格を喪失した場合に限定され、
除名が無効な場合には、使用者は解雇義務を負わないものと解すべきです。
そして、労働組合から除名された労働者に対し、
ユニオン・シヨツプ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として使用者が行う解雇は、
ユニオン・シヨツプ協定によって使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり、
客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができるのであり、
右除名が無効な場合には、前記のように使用者に解雇義務が生じないから、
このような場合には、
客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、
他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、
解雇権の濫用として無効であるといわなければなりません。
【ユニオン・ショップ協定とは】
ユニオンショップ協定とは、
職場の過半数を代表する労働組合と使用者との間で結ぶ労働協約で、
使用者が労働者を雇用する場合、
採用された労働者は必ず労働組合に加入しなければならず、
組合に加入しなかったり、組合を脱退又は除名された者については、
使用者はその労働者を解雇しなければならない制度のことです。
【まとめ】
使用者の解雇権の行使は、
客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、
権利の濫用として無効になります。
ユニオン・シヨツプ協定に基づき使用者が労働組合に対し解雇義務を負うのは、
当該労働者が正当な理由がないのに労働組合に加入しないために組合員たる資格を取得せず又は、
労働組合から有効に脱退し若しくは除名されて組合員たる資格を喪失した場合に限定され、
除名が無効な場合には、使用者は解雇義務を負わないため、
客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできないので、
他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、
解雇権の濫用として無効となります。。
【関連判例】
→「日本HP(ヒューレット・パッカード)事件と精神的不調による欠勤」
→「ネスレ日本(懲戒解雇)事件と懲戒権の濫用」