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ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合を脱退し、
他の労働組合に加入した労働者に対して、
ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は有効なのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、倉庫・港湾運送・陸上運送を業とする会社であり、
A組合との間で、「会社に所属する海上コンテナトレーラー運転手は、
双方が協議して認めた者を除き、すべて当該労働組合の組合員でなければならず、
会社は海上コンテナトレーラー運転手で当該組合に加入しない者及び、
当該組合を除名された者を解雇する」とのユニオン・ショップ協定を締結していました。
Xらは、A組合を脱退し、B組合に加入し、その事実をYに通知しました。
A組合は、Yに対して、ユニオン・ショップ協定に基づいてXの解雇を申し入れ、
Yは、ユニオン・ショップ協定に従って、Xを解雇しました。
そこで、Xらは、解雇の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、
使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより、
間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、
他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、
また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、
同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、
ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、
解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、
それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には、
許されないものというべきです。
したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、
締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、
他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について、
使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、
民法90条の規定により、これを無効と解すべきです(憲法28条参照)。
そうすると、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、
このような労働者に対してした解雇は、
同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、
他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、
解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ません(最高裁昭和43年(オ)第499号同50年4月25日第2小法廷判決・民集29巻4号456頁参照)。
本件についてこれをみるに、原審が適法に確定したところによると、
(1)Yは、A組合との間に「Yに所属する海上コンテナトレーラー運転手は、
双方が協議して認めた者を除き、すべて参加人組合の組合員でなければならない。
Yは、Yに所属する海上コンテナトレーラー運転手で、
A組合に加入しない者及び参加人組合を除名された者を解雇する。」との本件ユニオン・ショップ協定を締結していた、
(2)XらはYに勤務する海上コンテナトレーラー運転手であったが、
昭和58年2月21日午前8時半ころ、
A組合に対して脱退届を提出して同組合を脱退し、
即刻訴外B労働組合C支部に加入し、
その旨を同日午前9時10分ころYに通告した、
(3)A組合は、同日、Yに対し本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇を要求し、
Yは、同日午後6時ころ本件ユニオン・ショップ協定に基づきXらを解雇した、
というのであり、A組合を脱退してB組合に加入したXらについては、
本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務が生ずるものでないことは、
前記説示に照らし、明らかというべきです。
そうすると、Yが、本件ユニオン・ショップ協定に基づき、
Xらに対してした本件各解雇は、右協定によるYの解雇義務が生じていないときにされたものであり、
本件において他にその合理性を裏付ける特段の事由を認めることはできないから、
結局、本件各解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当なものとして是認することはできず、
解雇権の濫用として無効であるといわなければなりません。
【憲法28条】
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
【民法90条(公序良俗)】
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
【まとめ】
ユニオン・ショップ協定のうち、
締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び、
締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は、
新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、
民法90条により無効です。
【関連判例】
→「日本食塩製造事件とユニオン・ショップ協定に基づく解雇」