スポンサーリンク
紹介所に雇用され、同紹介所から病院へ派遣された形式をとっている付添婦は、
病院との関係において、使用従属関係にあるといえるのでしょうか。
【事件の概要】
Xは、Y病院に付添婦として採用されるに当たり、
Yの事務職員Aの面接を受けた結果、
平成4年3月から入院患者の付添婦として従事しました。
Yに勤務する付添婦は、B紹介所に雇用され、
同紹介所からYに派遣され勤務につく取扱いでした。
Yにおける付添婦としての勤務は、担当する患者をY病院から指定され、
出退勤をYの設置したタイムカードによって管理され、
日勤、夜勤により勤務する日をYの勤務表によって指定され、
付添業務そのものをYから指揮、命令されていました。
さらに、朝礼への参加、病院の清掃、夜警をYから命じられていました。
また、付添料は、月額20万円の給料の支払をYから受けていました。
そうしたなか、平成5年12月7日、XはYから解雇の意思表示をされたため、
Xは、解雇の無効を求めて争いました。
スポンサーリンク
【判決の概要】
使用者と労働者の間に個別的な労働契約が存在するというためには、
両者の意思の合致が必要であるとしても、
労働契約の本質を使用者が労働者が指揮命令し、
監督することにあると解する以上、
明示された契約の形式のみによることなく、
当該労務供給形態の具体的実態を把握して、
両者間に事実上の使用従属関係があるかどうか、
この使用従属関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思の合致があるかどうかにより決まるものと解するのが相当です。
Xは、B紹介所に雇用され同紹介所からYに派遣された付添婦という形式がとられているものの、
あくまでも形式だけのものであり、
しかもB紹介所のオーナーであるC株式会社が人的構成や出資面で、
Yから支配されているという関係にあり、
結局のところY病院を経営するYの指揮、命令及び監督のもとにY病院に対して、
付添婦としての労務を提供し、
Y病院がこれを受領していたものと評価することができるから、
Y病院を経営するYとの間に実質的な使用従属関係が存在していたものということができ、
又、客観的に推認されるXとYの意思は、
労働契約の締結を承諾をしていたものと解するのが相当であって、
結局両者の間には黙示の労働契約の成立が認められるというべきです。
したがって、Xは、平成4年3月にY病院の付添婦(職員)として採用され、
Yとの間に労働契約を締結したものと認めるのが相当です。
【まとめ】
病院と付添婦との間には、
実質的な使用従属関係が存在していたものということができ、
又、客観的に推認される両者の意思は、
労働契約の締結を承諾をしていたものと解するのが相当であって、
両者の間には黙示の労働契約の成立が認められます。
【関連判例】
→「横浜南労基署長(旭紙業)事件と労働者の定義」
→「藤沢労基署長(大工負傷)事件と労働者の定義」
→「新宿労基署長(映画撮影技師)事件と労働者性」
→「関西医科大学研修医(未払賃金)事件と研修医の労働者性」
→「新国立劇場運営財団事件と労働組合法上の労働者」