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期間を定めて労働契約を締結した労働者に対して、
契約を反復更新した後の雇止めは有効なのでしょうか。
【事件の概要】
Xは、昭和45年12月1日から同月20日までの期間を定めてYに臨時員として雇用され、
同月21日以降、期間2ヶ月の労働契約が5回更新されてきたが、
Yは不況に伴う業務上の都合を理由に、
昭和46年10月21日以降の契約の更新を拒絶しました。
Yの臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて、
雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、
臨時員の採用に当たっては学科試験や技能試験等は行わず、
簡易な方法で採用を決定していました。
Yにおいては、臨時員に対し、一般的には前作業的要素の作業、
単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとっており、
Xも比較的簡易な作業に従事していました。
Yは、臨時員の契約更新に当たっては、更新期間の約1週間前に本人の意思を確認し、
当初作成の労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、
臨時員の印を押捺せしめていたものであり、
XとYとの間の5回にわたる労働契約の更新は、
いずれも期間満了の都度新たな契約を更新する旨を合意することによってされてきたものです。
なお、Yは雇止めをXら臨時員等に告知した際、Yの業績悪化等を説明した上で、
希望者には就職先の斡旋をすることを告げたが、Xはそれを希望しませんでした。
Xは、Yとの間の労働契約は期間の定めのないものであったことを前提に、
契約の更新拒否は解雇にほかならず、本件解雇は権利濫用であると主張し、
雇止めの無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
本件労働契約の期間の定めを民法90条に違反するものということはできず、
また、5回にわたる契約の更新によって、
本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、
あるいはXとYとの間に、期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきです。
Yの臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、
その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、
Xとの間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、
このような労働者を契約期間満了によって雇止めにするに当たっては、
解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、
信義則違反又は不当労働行為などに該当して、
解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、
期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられます。
しかし、右臨時員の雇用関係は、
比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、
雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に、
期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とは、
おのずから合理的な差異があるべきです。
したがって、後記のとおり独立採算制がとられているYのP工場において、
事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、
その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、
臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、
これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき、
希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、
それをもって不当・不合理であるということはできず、
右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきです。
【まとめ】
5回にわたる契約の更新によって、
労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、
期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたわけではないが、
雇用関係継続への合理的な期待が認められるときには、
解雇権濫用法理が類推されます。
そして、雇止めの効力を判断すべき基準については、
期間の定めのない労働契約を締結している労働者とは合理的な差異が認められ、
やむを得ない理由により人員整理する場合において、
期間の定めのない労働契約を締結している労働者に先立ち、
臨時員を雇止めすることも許されます。
【関連判例】
→「神戸弘陵学園事件と試用期間」
→「東芝柳町工場事件と有期労働契約の反復と雇止め」
→「龍神タクシー事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「丸島アクアシステム事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「ロイター・ジャパン事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「旭川大学事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「カンタス航空事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「京都新聞COM事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「明石書店(製作部契約社員・仮処分)事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「近畿コカ・コーラボトリング事件と有期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「雪印ビジネスサービス事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」
→「本田技研工業事件と有期雇用契約の更新拒否(雇止め)」
→「日本郵便(苫小牧支店時給制契約社員B)事件と短期労働契約の更新拒否(雇止め)」