東芝柳町工場事件と有期労働契約の反復と雇止め

(最一小判昭49.7.22)

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契約期間を2か月として臨時に雇用された労働者が、

当該労働契約の更新の反復の後に雇止めされた場合、

その雇止めは効力を有するのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、電気機器等の製造販売を目的とする株式会社であるが、

その従業員には正規従業員(本工)と臨時従業員(臨時工)の種別があり、

後者は、基幹作業に従事する基幹臨時工と附随作業を行うその他の臨時工とに分かれていました。

基幹臨時工は、景気の変動による需給にあわせて雇傭量の調整をはかる必要から雇傭されたものであって、

その採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等において本工と異なる取扱をされ、

本工労働組合に加入しえず、労働協約の適用もないけれども、

その従事する仕事の種類、内容の点においては本工と差異はありませんでした。

Yにおける基幹臨時工の数は、昭和25年朝鮮動乱を機として漸次増加し、

以後昭和37年3月までは必ずしも景気の変動とは関係なく増加の一途をたどり、

ことに昭和33年から同38年までは毎年相当多数が採用され、

総工員数の平均30パーセントを占めていました。

そして、基幹臨時工が2か月の期間満了によって傭止めされた事例は見当らず、

自ら希望して退職するものの外、

そのほとんどが長期間にわたって継続雇傭されていました。

また、Yの臨時従業員就業規則(以下、臨就規という。)の年次有給休暇の規定は、

1年以上の雇傭を予定しており、1年以上継続して雇傭された臨時工は、

試験を経て本工に登用することとなっているが、

右試験で数回不合格となった者でも、相当数の者が引続き雇傭されていました。

Xらは、いずれも、Yと契約期間を2か月と記載してある臨時従業員としての労働契約書を取りかわして入社した基幹臨時工であるが、

その採用に際しては、Y側に、Xらに長期継続雇傭、

本工への登用を期待させるような言動があり、

Xらも、右期間の定めにかかわらず継続雇傭されるものと信じて前記契約書を取りかわしたのであり、

また、本工に登用されることを強く希望していたものであって、

その後、YとXらとの間の契約は、5回ないし23回にわたって更新を重ねた後、

Yは、Xらとの契約更新を拒否しました。

そこで、Xらは、Yに対して、右拒否は実質的な解雇に当り、

しかも理由のない解雇であるとして無効を求めて争いました。

なお、Yは、Xらとの契約更新に当たって、必ずしも契約期間満了の都度、

直ちに新契約締結の手続をとっていたわけではありませんでした。

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【判決の概要】


本件各労働契約においては、

Yとしても景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じないかぎり、

契約が継続することを予定していたものであって、

実質において、当事者双方とも、期間は一応2か月と定められてはいるが、

いずれかから格別の意思表示がなければ、

当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、

したがって、本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねて、

あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、

本件各傭止めの意思表示は、

右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、

実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、

また、そうである以上、本件各傭止めの効力の判断にあたっては、

その実質にかんがみ、

解雇に関する法理を類推すべきであるとするものであることが明らかであって、

上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、

その過程に所論の違法はありません。

そこで考えるに、就業規則に解雇事由が明示されている場合には、

解雇は就業規則の適用として行われるものであり、

したがって、その効力も右解雇事由の存否のいかんによって決せらるべきであるが、

右事由に形式的に該当する場合でも、

それを理由とする解雇が著しく苛酷にわたる等相当でないときは、

解雇権を行使することができないものと解すべきです。

ところで、本件臨就規8条はYにおける基幹臨時工の解雇事由を列記しており、

そのうち同条3号は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、

上記のように、本件各労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあったこと、

及び上記のようなYにおける基幹臨時工の採用、傭止めの実態、その作業内容、

Xらの採用時及びその後におけるXらに対するY側の言動等にかんがみるときは、

本件労働契約においては、単に期間が満了したという理由だけでは、

Yにおいて傭止めを行わず、Xらもまたこれを期待、信頼し、

このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきたものというべきです。

そして、このような場合には、経済事情の変動により剰員を生じる等Yにおいて、

従来の取扱いを変更して右条項を発動してもやむをえないと認められる特段の事情の存しないかぎり、

期間満了を理由として傭止めをすることは、

信義則上からも許されないものといわなければなりません。

しかるに、この点につきYはなんら主張立証するところがないのです。

もっとも、前記のように臨就規8条は、

期間中における解雇事由を列記しているから、

これらの事由に該当する場合には傭止めをすることも許されるというべきであるが、

この点につき原判決はYの主張する本件各傭止めの理由がこれらの事由に該当するものでないとしており、

右判断はその適法に確定した事実関係に照らしていずれも相当というべきであって、

その過程にも所論の違法はありません。

そうすると、YのしたXらに対する本件傭止めは、

臨就規8条に基づく解雇としての効力を有するものではなく、

これと同趣旨に出た原判決に所論の違法はありません。

【まとめ】


本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねて、

あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態であり、

本件各傭止めの効力の判断にあたっては、解雇に関する法理を類推すべきです。

相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されているような場合には、

経済事情の変動により剰員を生じる等、

従来の契約を反復更新するという取扱いを変更してもやむをえないと認められる特段の事情がないかぎり、

期間満了を理由として雇止めをすることは、信義則上からも許されません。

【関連判例】


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