陸上自衛隊第331会計隊事件と国の安全配慮義務

(最二小判昭58.5.27)

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自衛隊の自動車の運転者が、

運転上の注意義務を怠ったことにより生じた同乗者の死亡事故について、

国の右同乗者に対する安全配慮義務違反は認めれれるのでしょうか。

【事件の概要】


陸上自衛隊第331会計隊長であるD一等陸尉(以下「D一尉」という。)は、

第327会計隊から臨時勤務者(車両操縦手)として派遣されてきていたE一等陸士の勤務期間が終了したので、

同人を原隊に送り届けることになりました。

その際D一尉は、会計隊長として、Gに対し、

道路状況の把握、車両操縦の実地の見学、第327会計隊の見学等のほか、

運転助手を勤めさせる目的で、

第331隊装備の4分の1トントラツク(以下「本件事故車」という。)に同乗を命じました。

D一尉は、本件事故車を運転してE一等陸士を第327会計隊に送り届けたのち帰途につき、

本件事故車の後輪を左に滑走させ、

狼狽の余りハンドルを切り返して進路を正常に復させる余裕もないまま、

本件事故車を道路上で回転させて反対車線に進入させ、

折から対面進行してきたH運転の大型貨物自動車の右前部に、

自車右側面部を衝突せしめ、その衝撃によって、

本件事故車に同乗していたGに頭蓋血腫、脳挫傷の傷害を負わせ、

同人を死亡させました。

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【判決の概要】


国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、

施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって、

公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っています(最高裁昭和48年(オ)第383号同50年2月25日第3小法廷判決・民集29巻2号143頁)。

右義務は、国が公務遂行に当たつて支配管理する人的及び物的環境から生じうべき危険の防止について信義則上負担するものであるから、

国は、自衛隊員を自衛隊車両に公務の遂行として乗車させる場合には、

右自衛隊員に対する安全配慮義務として、車両の整備を十全ならしめて車両自体から生ずべき危険を防止し、

車両の運転者としてその任に適する技能を有する者を選任し、

かつ、当該車両を運転する上で特に必要な安全上の注意を与えて車両の運行から生ずる危険を防止すべき義務を負うが、

運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、

右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、

また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、

右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、

国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきです。

本件についてみると、本件事故は、D一尉が車両の運転者として、

道路交通法上当然に負うべきものとされる通常の注意義務を怠ったことにより発生したものであることが明らかであって、

他に国の安全配慮義務の不履行の点は認め難いから、

国の安全配慮義務違反はないとした原審の判断は、

正当として是認することができ、原判決に所論の違法はありません。

【まとめ】


運転者が道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべき通常の注意義務は、

安全配慮義務の内容に含まれるものではありません。

また、安全配慮義務の履行補助者が、

車両に自ら運転者として乗車する場合であっても、

履行補助者に運転者としての運転上の注意義務違反があったからといって、

国の安全配慮義務違反があったものとすることはできません。

【関連判例】


「陸上自衛隊八戸車両整備工場事件と国の安全配慮義務」
「山田製作所(うつ病自殺)事件と使用者の安全配慮義務違反」
「前田道路事件と安全配慮義務」
「日本政策金融公庫(うつ病・自殺)事件と安全配慮義務」
「東芝(うつ病・解雇)事件と過失相殺」
「NTT東日本北海道支店事件と過失相殺」