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当初の試用期間を延長した後に、
従業員として不適格と判断されて解雇された場合、
当該労働者の解雇は有効なのでしょうか。
【事件の概要】
Xは、Y社に、当初3ヵ月の試用期間を定めて、試雇用員として採用されました。
Xはミスが多く、また、反抗的な態度をとることも多く、
配属1ヵ月後、Xの直属の上司は、XをYの従業員としては不適格と判断し、
口頭で退職を勧告したが、Xはこれに応じませんでした。
そして、2ヵ月目にも再度退職勧告をしたが、
Xは、もう少し猶予して欲しい旨述べて応じませんでした。
試用期間が満了する3ヵ月目においても、Xの考課査定は相変わらず悪かったが、
更に訓練すればあるいは本採用できるかもしれないと考え、
試用期間を3ヵ月延長することにしました。
ところが、Xのミスは何度注意されても直らず、
延長された試用期間経過後において、上司とつかみ合いの喧嘩を起こしました。
その後、XはYから退職勧告を受けたが、
Xは仕事を続けさせて欲しい旨懇請したので、再度試用期間を延長しました。
しかし、その後もXはトラブルが絶えず、パートタイマーと激しい口論を引き起こすに至ったところで、
Yは、Xを解雇しました。
そこで、Xは、解雇の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
Y社の就業規則は、採用内定者について原則として3ヵ月間の試用期間を置き、
その期間中の身分を試雇用員としていわゆる正社員と区別し、
その期間に本人の身元、健康状態、技能、勤務成績等を審査して不適格と認められたときは解約し、
他方、試用期間を終えて正式に採用された者を正社員とする旨定めていること(11、14条)が認められます。
そうすると、Y社における試用期間は、
新採用者が正社員として本採用するに足りる職務適格性を有するか否かを判断するための期間であり、
その間に職務不適格と判断された場合には解雇することができるとの解雇権が留保された期間であると解することができます。
そして、この試用期間の趣旨に照らせば、
試用期間満了時に一応職務不適格と判断された者について、
直ちに解雇の措置をとるのでなく、配置転換などの方策により更に職務適格性を見いだすために、
試用期間を引き続き一定の期間延長することも許されるものと解するのが相当です。
ところが、Y社がした1回目の試用期間の延長はこの観点から是認することができるものの、
第2回目の試用期間の延長については、1回延長した試用期間満了すべき昭和56年10月6日よりも後に行われ、
また、延長する期間の定めもされていないのであるから、
その動機、目的はともあれ、これを相当な措置として認めることはできません。
したがって、本件解雇時において、Xは既に試用期間を終えていることになるから、
本件解雇が効力を有するためには、
正社員に対するのと同様の解雇事由の存在が要求されるものといわなければなりません。
Y社の就業規則は「就業態度が著しく不良で他に配置転換の見込みがないと認めたとき」を解雇事由の1つとして定めていること(39条2号)、
Y社はこの解雇事由によって本件解雇をしたことが認められます。
Xの行為は総合してこの解雇事由に該当し、
一連の経過に照らせば解雇権の濫用はないものと認めるのが相当であるから、
結局、本件解雇は有効です。
【まとめ】
本件解雇時において、既に試用期間を終えていることになるから、
本件解雇が効力を有するためには、
正社員に対するのと同様の解雇事由の存在が要求され、
本件の解雇は、就業規則の解雇事由に該当すると認められるので、
本件解雇は有効です。
【関連判例】
→「神戸弘陵学園事件と試用期間」
→「ブラザー工業事件と長期の試用期間」
→「テーダブルジェー事件と試用期間中の解雇」
→「三井倉庫事件と試用期間中の解雇」
→「ブレーンベース事件と試用期間中の解雇」
→「新光美術事件と本採用拒否」
→「ニュース証券事件と試用期間途中の解雇」
→「医療法人財団健和会事件と試用期間途中の解雇」