高田建設従業員事件と労災保険給付の控除と過失相殺との関係

(最三小判平元.4.11)

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第三者行為災害に係る損害賠償額の算定に当たって、

過失相殺と労災保険給付額の控除との先後関係は、

どのように判断されるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、業務で普通貨物自動車を運転中に、Yが運転する乗用車と衝突して負傷しました。

そこで、Xは、YとY運転の乗用車の所有者であるZ社に対して損害賠償を請求しました。

Xがこの事故により被った損害は、

療養費、通院費、入院付添費、入院雑費、休業補償、入通院慰謝料、弁護士費用等でした。

他方、自賠責保険から療養費が、労災保険から休業補償給付が支給され、

また、Z社から150万円の支払われました。

第1審は、損害賠償額全体から労災保険給付分を控除した後、

Xの過失分7割を減額した額の損害賠償を認めました。

Xは控訴したが、原審は、Xの過失分を6割と認定し、

Xの過失分をまず減額したところ、休業損害は、労災保険給付により全額が填補され、

その他の損害も、自賠責保険とZ社の支払いによって全額填補されているとの理由により、

Xの請求を棄却したため、Xは上告しました。

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【判決の概要】


労働者災害補償保険法(以下「法」という。)に基づく保険給付の原因となった事故が、

第三者の行為により惹起され、

第三者が右行為によって生じた損害につき賠償責任を負う場合において、

右事故により被害を受けた労働者に過失があるため、

損害賠償額を定めるにつきこれを一定の割合で斟酌すべきときは、

保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害の賠償額を算定するには、

右損害の額から過失割合による減額をし、

その残額から右保険給付の価額を控除する方法によるのが相当です(最高裁昭和51年(オ)第1089号同55年12月18日第1小法廷判決・民集34巻7号888頁参照)。

けだし、法12条の4は、事故が第三者の行為によって生じた場合において、

受給権者に対し、政府が先に保険給付をしたときは、

受給権者の第三者に対する損害賠償請求権は右給付の価額の限度で当然国に移転し(1項)、

第三者が先に損害賠償をしたときは、

政府はその価額の限度で保険給付をしないことができると定め(2項)、

受給権者に対する第三者の損害賠償義務と政府の保険給付義務とが相互補完の関係にあり、

同一の事由による損害の二重填補を認めるものではない趣旨を明らかにしているのであって、

政府が保険給付をしたときは、右保険給付の原因となった事由と同一の事由については、

受給権者が第三者に対して取得した損害賠償請求権は、

右給付の価額の限度において国に移転する結果減縮すると解されるところ(最高裁昭和50年(オ)第431号同52年5月27日第3小法廷判決・民集31巻3号427頁、同50年(オ)第621号同52年10月25日3三小法廷判決・民集31巻6号836頁参照)、

損害賠償額を定めるにつき労働者の過失を斟酌すべき場合には、

受給権者は第三者に対し右過失を斟酌して定められた額の損害賠償請求権を有するにすぎないので、

同条1項により国に移転するとされる損害賠償請求権も過失を斟酌した後のそれを意味すると解するのが、

文理上自然であり、右規定の趣旨にそうものといえるからです。

【労働者災害補償保険法12条の4】


政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

◯2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。

【まとめ】


労働者が、第三者行為災害により被害を受け、

第三者がその損害につき賠償責任を負う場合において、

賠償額の算定に当たり労働者の過失を斟酌すべきときは、

右損害の額から過失割合による減額をし、

その残額から労働者災害補償保険法に基づく保険給付の価額を控除します。

【関連判例】


「NTT東日本北海道支店事件と過失相殺」