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ホテル業を営む会社の従業員で組織する労働組合が実施したリボン闘争は、
労働組合の正当な行為として認められるのでしょうか。
【事件の概要】
ホテル業を営むX会社の従業員で組織するA労働組合は、
昭和45年9月賃上げ要求で団交を重ねたが、
妥結に至らなかったので、10月3日会社に通告のうえ、
同6日午前9時から8日午前8時まで要求貫徹と書かれたリボンを着用する「リボン」闘争を実施しました。
会社は就業規則に基づき組合三役にたいし、
平均賃金半日分を減給する懲戒処分をおこないました。
これに対し、組合は右処分撤回を求めて交渉したが決裂し、
同月28日午前7時から30日午後12時まで再びリボン闘争を実施しました。
会社は11月19日組合三役に譴責処分をおこないました。
組合は、右懲戒処分につき不当労働行為の救済申立てをしたところ、
東京地労委は、本件リボン闘争は正当な争議行為であるとして、
右処分の取消しを命ずる救済命令を発しました。
そこで、会社は、命令の取消を求める行政訴訟を起こしました。
第1審の東京地裁は、
「一般にリボン闘争は、組合活動の面においては経済的公正を欠き誠実に労務に服すべき労働者の義務に違背するが故に、また争議行為の面においては労働者に心理的二重構造をもたらし、また、使用者はこのような戦術に対抗しうる争議手段をもたないが故に、違法であること、また、ホテル業におけるリボン闘争は、業務の正常な運営を阻害する意味合いが強いので、特別の違法性を有することを理由として、本件懲戒処分は不当労働行為に該当しないもの」
と判断し、救済命令を取消しました。
第2審の東京高裁は、第1審判決を支持し、控訴を棄却しました。
これに対して、都労委が上告しました。
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【判決の概要】
本件リボン闘争について原審の認定した事実の要旨は、
A組合は、昭和45年10月6日午前9時から同月8日午前7時までの間及び、
同月28日午前7時から同月30日午後12時までの間の2回にわたり、
Xの経営するホテルF内において、
就業時間中に組合員たる従業員が各自「要求貫徹」又は、
これに添えて「G労連」と記入した本件リボンを着用するというリボン闘争を実施し、
各回とも当日就業した従業員の一部の者(950ないし989名中228ないし276名)がこれに参加して本件リボンを着用したが、
右の本件リボン闘争は、主として、
結成後3か月のA組合の内部における組合員間の連帯感ないし仲間意識の昂揚、
団結強化への士気の鼓舞という効果を重視し、
同組合自身の体造りをすることを目的として実施されたものであるというのです。
そうすると、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、
本件リボン闘争は就業時間中に行われた組合活動であって、
組合の正当な行為にあたらないとした原審の判断は、
結論において正当として是認することができます。
【まとめ】
リボン闘争の目的が、主として、
結成後3か月の組合の内部における組合員間の連帯感ないし仲間意識の昂揚、
団結強化への士気の鼓舞という効果を重視し、
組合自身の体造りをすることにあったというような事情があるときは、
リボン闘争は、就業時間中の組合活動であって、
労働組合の正当な行為にあたりません。
【関連判例】
→「目黒電報電話局事件と休憩時間」