あさひ保育園事件と整理解雇

(最一小判昭58.10.27)

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使用者が、労働者や労働組合に対して、

人員整理のやむをえないことにつき説明し、

理解と協力を求める努力を一切せずにした解雇通告は、

認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、保育園を経営しており、Xは、保母としてYと雇用契約を締結していました。

昭和50年4月におけるYの園児数は185名であったが、

園児が新たに設立された保育園に転園したことや、

卒園児に対して入園児が少なかったことから、

昭和51年4月における園児数は126名となりました。

Yは、それまでの定員150名を120名に削減することを決定し、

北九州市に届け出でて、承認されました。

Yでは市から支給される措置費がその主たる運営資金であったところ、

定員削減により、これが減額されることになったこと、

園児の減少により従前8名いた保母は6名でも足りることになったこと、

従前から保育園の運営費に余裕がなく、

収入減少に対応するには人件費削減によるしかなかったことを理由として、

同年3月5日、理事会において2名の保母を解雇することを議決し、

同月25日、Xほか1名を解雇しました。

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【判決の概要】


原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、

Yにおいて、園児の減少に対応し保母2名を人員整理することを決定すると同時に、

Xほか1名の保母を指名解雇して右人員整理を実施することを決定し、

事前に、Xを含むYの職員に対し、

人員整理がやむをえない事情などを説明して協力を求める努力を一切せず、

かつ、希望退職者募集の措置を採ることもなく、

解雇日の6日前になって突如通告した本件解雇は、

労使間の信義則に反し、解雇権の濫用として無効である、

とした原審の判断は、是認することができないものではなく、

原判決に所論の違法はありません。

【関連判例】


「東洋酸素事件と整理解雇」