関西医科大学研修医(未払賃金)事件と研修医の労働者性

(最二小判平17.6.3)

スポンサーリンク










臨床研修として病院において研修プログラムに従い、

臨床研修指導医の指導の下に医療行為等に従事する研修医は、

労働者と認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Aは、平成10年4月に医師国家試験に合格し、

同年6月から学校法人Yが開設しているB医科大学附属病院耳鼻咽喉科(以下「本件病院」という。)の臨床研修医となりました。

Aは、平成10年5月6日から見学生として耳鼻咽喉科で研修を開始し、

同年6月1日以降は研修医として研修を受け始めました。

平日の研修時間は原則として午前7時30分から午後10時までの13時間と定められ、

土曜日、日曜日も休めない状況にありました。

月単位の研修時間は、6月は323時間、7月は356時間、

夏期休暇のあった8月の15日間でも98,5時間であり、

Aが死亡する直前1ヶ月間の研修時間は274,5時間となっていました。

Aは、同年8月15日午後7時に看護婦らと4人で食事をしたが、

その際飲酒はせず午後11時頃に自宅に戻り、翌16日午前0時頃突然死亡しました。

Aの両親Xらは、Aは労働基準法9条所定の労働者であり、

最低賃金法2条所定の労働者に該当するのに、YはAに対して、

奨学金等として最低賃金額に達しない金員しか支払っていなかったとして、

Yに対し、最低賃金額とAに対して支払っていた奨学金等との差額に相当する賃金の支払を求めて争いました。

スポンサーリンク










【判決の概要】


研修医は、医師国家試験に合格し、医籍に登録されて、

厚生大臣の免許を受けた医師であって(医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)2条、5条)、

医療行為を業として行う資格を有しているものである(同法17条)ところ、

同法16条の2第1項は、医師は、免許を受けた後も、

2年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において、

臨床研修を行うように努めるものとすると定めています。

この臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、

教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、

臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定しています。

そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、

これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、

病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、

上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきです。

これを本件についてみると、前記事実関係によれば、

本件病院の耳鼻咽喉科における臨床研修のプログラムは、

研修医が医療行為等に従事することを予定しており、

Aは、本件病院の休診日等を除き、Yが定めた時間及び場所において、

指導医の指示に従って、Yが本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたというのであり、

これに加えて、Yは、Aに対して奨学金等として金員を支払い、

これらの金員につき給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたというのです。

そうすると、Aは、Yの指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法9条所定の労働者に当たり、

最低賃金法2条所定の労働者に当たるというべきであるから、

Yは、同法5条2項により、Aに対し、

最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたものというべきです。

【労働基準法9条(労働者の定義)】


この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

【最低賃金法2条(定義)】


この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 労働者 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。

二 使用者 労働基準法第十条に規定する使用者をいう。

三 賃金 労働基準法第十一条に規定する賃金をいう。

【まとめ】


研修医が医療行為等に従事する場合には、

これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、

病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、

研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たります。

【関連判例】


「横浜南労基署長(旭紙業)事件と労働者の定義」
「藤沢労基署長(大工負傷)事件と労働者の定義」
「安田病院事件と黙示の労働契約」
「CBC管弦楽団事件と労働者性」
「新宿労基署長(映画撮影技師)事件と労働者性」
「新国立劇場運営財団事件と労働組合法上の労働者」