東京エグゼクティブ・サーチ事件とスカウト行為と職業紹介

(最二小判平6.4.22)

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スカウト(ヘッドハンティング)行為は、

職業安定法にいう職業紹介に当たるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、企業の依頼に応じてその求める人材を探索し、勧奨して、

求人企業に就職させるいわゆる人材スカウト等を目的とする会社であり、

有料職業紹介事業を行うことにつき、

職業安定法32条1項ただし書に基づく労働大臣の許可を得ています。

Yは、内科及び婦人科の診療所を経営しています。

Xは、昭和62年7月10日ころ、Yに対し、

右診療所の院長として勤務することのできる内科又は婦人科の医師を探索し、

紹介する旨を約し、同月13日ころから医師の探索を始め、

数人の医師をYに紹介したが、Yと右医師らとの間で契約成立に至らず、

平成元年2月15日ころ、Yに対し、A医師を紹介しました。

その結果、Yは、A医師との間で、同年4月1日から同医師を右診療所の院長として、

年俸1000万円で雇用する旨の契約を締結しました。

Yは、Xに対し、平成元年3月30日ころ、

A医師の就職に至るまでのXの業務(以下「本件業務」という。)の対価として、

調査活動費の名目で50万円、報酬の名目で150万円の合計200万円を、

同年6月30日限り支払うことを約しました。

Yは、本件業務は、一体として職業安定法5条1項、

32条1項ただし書の規定する職業紹介に当たるから、

その報酬額は、同条6項、同法施行規則24条14項、別表第3により、

A医師の6か自分の賃金の10,1%相当額である50万5000円が最高額であり、

これを超える金額については支払義務がないと主張して、

右最高額を超える部分の支払を拒みました。

そこで、Xは、報酬額と遅延損害金の支払いを求めて争いました。

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【判決の概要】


職業安定法にいう職業紹介におけるあっ旋とは、

求人者と求職者との間における雇用関係成立のための便宜を図り、

その成立を容易にさせる行為一般を指称するものと解すべきであり(最高裁昭和28年(あ)第4787号同30年10月4日第3小法廷決定・刑集9巻11号2150頁)、

右のあっ旋には、求人者と求職者との間に雇用関係を成立させるために両者を引き合わせる行為のみならず、

求人者に紹介するために求職者を探索し、

求人者に就職するよう求職者に勧奨するいわゆるスカウト行為(以下「スカウト行為」という。)も含まれるものと解するのが相当です。

けだし、同法は、労働力充足のためにその需要と供給の調整を図ることと並んで、

各人の能力に応じて妥当な条件の下に適当な職業に就く機会を与え、

職業の安定を図ることを目的として制定されたものであって、

同法32条は、この目的を達成するため、

弊害の多かった有料の職業紹介事業を行うことを原則として禁じ、

公の機関によって無料で公正に職業を紹介することとし、

公の機関において適切に職業を紹介することが困難な特別の技術を必要とする職業に従事する者の職業をあっ旋することを目的とする場合については、

労働大臣の許可を得て有料の職業紹介事業を行うことができるものとしたものであるところ(最高裁昭和24年新(れ)第7号同25年6月21日大法廷判決・刑集4巻6号1049頁参照)、

スカウト行為が右のあっ旋に当たらず、同法32条等の規制に服しないものと解するときは、

以上に述べた同法の趣旨を没却することになるからです。

この理は、スカウト行為が医師を対象とする場合であっても同様です。

また、同法にいう職業紹介に当たるというためには、

求人及び求職の双方の申込みを受けることが必要である(同法5条1項)が、

右の各申込みは、あっ旋に先立ってされなければならないものではなく、

例えば、紹介者の勧奨に応じて求職の申込みがされた場合であってもよいのです。

以上を本件についてみるのに、

A医師に対するスカウト行為を含む本件業務が一体として、

同法にいう職業紹介におけるあっ旋に当たるものとした原審の判断は、

正当として是認することができます。

職業安定法32条6項は、有料職業紹介の手数料契約のうち、

労働大臣が中央職業安定審議会に諮問の上定める手数料の最高額を超える部分の私法上の効力を否定し、

右契約の効力を所定最高額の範囲内においてのみ認めるものと解するのが相当です。

けだし、同法の前記一の2のとおりの立法趣旨にかんがみ、

同条項は、右手教科契約のうち所定最高額を超える部分の私法上の効力を否定することによって、

求人者及び求職者の利益を保護する趣旨をも含むものと解すべきであるからです。

したがって、本件報酬契約のうち同法施行規則24条14項、

別表第3所定の紹介手数料の最高額を超える部分の効力を否定した原審の判断は、

正当として是認することができ、原判決に所論の違法はありません。

【まとめ】


職業安定法にいう職業紹介におけるあっ旋とは、

求人者と求職者との間に雇用関係を成立させるために、

両者を引き合わせる行為のみならず、

いわゆるスカウト行為も含まれます。