テーダブルジェー事件と試用期間中の解雇

(東京地判平13.2.27)

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試用期間中の労働者が使用者に対して、

声を出してあいさつしなかったことを理由に解雇された場合、

当該解雇は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、昭和56年に経営学修士過程を終了後、

証券会社及びアメリカのベンチャー企業で勤務し、

平成11年に帰国後、求職活動をしていました。

Yは、消費者金融会社A社の子会社であって、

ベンチャー企業への投資(ベンチャーキャピタル)を主な業務としています。

Xは、A社のベンチャーキャピタルの人員募集の求人広告によりA社に応募したところ、

Yの代表取締役でもあるA社の会長との面接の上でYからの採用通知を受け、

平成12年4月4日以降、Yに勤務しました。

YにおけるXの業務は、Yが出資するのに適当な有望企業を発見、調査することでした。

ところが、同月下旬にA社の会長がY社を訪れた際に、

Xら4名の社員が、会長に対して起立したものの声を出してあいさつしなかったことから、

Xを解雇しました。

そこで、Xは、解雇の無効を求めて争いました。

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【判決の概要】


本件就業規則の制定の経緯及び本件就業規則の内容によれば、

A社の就業規則には本件就業規則と同じ内容の試用期間に関する定めがあるものと考えられるところ、

XのYへの入社の経緯によれば、当初の予定ではA社に入社するものとされていたXは、

面接後にA社の都合によりA社の別会社として新たに設立されたYに入社することとされたのであるが、

仮にXが当初の予定どおりにA社に入社していたとすれば、

XとA社との間の労働契約は試用期間付の契約ということになったはずであり、

このことに本件就業規則の制定の経緯を併せ考えると、

Xは、本件労働契約に本件就業規則をさかのぼって適用することを承諾したものというべきです。

そうすると、本件労働契約は試用期間付契約であるということになります。

Yの社員はわずか11人であるから、Xが入社してから1か月足らずであったとはいえ、

平成12年4月下旬ないし同年5月上旬の時点において、

Cにしろ、E次長にしろ、Xの仕事ぶりを全く知らなかったとは考え難いところ、

Cが2回にわたりA会長に対しXの解雇を思いとどまるよう求めたり、

E次長がXに対しわび状を作成してこれをA会長に提出するよう促していることからすれば、

平成12年4月下旬ないし同年5月上旬の時点において,

Yの主張に係る前記(ア)ないし(カ)の各事実は全く存在しなかったか、

仮に存在していたとしても、

Yにおいては本件労働契約の打切りを考える理由になり得るほどに容易に看過することができない事実とは受け止められていなかったものと考えられるのであって、

このことに、本件採用取消しに至るまでの経過及び証拠を加えて総合考慮すれば、

本件採用取消しは、A会長がYの事務所を訪れたときに、

Xが声を出してあいさつしなかったことを理由にされたものと認められます。

証拠のうちこの認定に反する部分は採用できず、

他にこの認定を左右するに足りる証拠はありません。

Yが上記で認定した理由によりXに対し本件採用取消しに及んだことが、

社会通念上相当として是認することはできないから、

本件採用取消しは、解雇権の濫用として無効です。

【関連判例】


「神戸弘陵学園事件と試用期間」
「雅叙園観光事件と試用期間の延長」
「ブラザー工業事件と長期の試用期間」
「三井倉庫事件と試用期間中の解雇」
「ブレーンベース事件と試用期間中の解雇」
「新光美術事件と本採用拒否」
「ニュース証券事件と試用期間途中の解雇」
「医療法人財団健和会事件と試用期間途中の解雇」