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労働者が町会議員に就任したことが、
就業規則、労働協約所定の特別休職事由にあたるとして、
特別休職処分に付されるとともに本社への配転命令を受けたが、
当該処分は有効なのでしょうか。
【事件の概要】
Xは、昭和45年3月にYに入社して以来勤務を継続してきました。
昭和54年9月、町議会議員選挙に立候補して当選し、
同年10月1日上記議員に就任することになっていました。
そこで、YはXに対して、上記公務就任が、
就業規則22条2項および労働協約63条2項各号の
「知事、市町村長、国会および地方議会議員、その他の公共団体の有給公務員に就任したとき」に該当することを理由に、
労働者を特別休職処分(以下、「本件休職」という。本件休職期間中は無給である)とし、
あわせて本社人事部に配置転換する旨を通知しました。
そこで、同年10月1日に町会議員に就任したXは、
本件休職処分等の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
右の諸規定を合理的に解釈すると、Yにおける特別休職制度は、
解雇猶予措置と考えられる事故休職の制度とは明確に区別され、
少なくとも、右休職事由①(刑事あるいは民事事件に関して起訴され、
勤務させることが適当でないと認めたとき、判決が確定するまでの期間)
ないし④(会社の都合により出向を命ぜられ在籍のまま離職したとき、
その事由が消滅するまでの期間)に関する限り、
従業員が長期にわたって継続的または断続的に職務を離れるため、
当該従業員を働かせても労働契約上の債務の本旨に従った履行が期待できず、
業務の正常な運営が妨げられることになる場合、人事管理上の必要から、
右職務離脱の期間、労働契約は存続させるが、
労働の義務を消滅させてその間の賃金を原則として無給とし、
職務復帰が可能となれば原則として復職させることとし、
その間の身分上の取扱いを休職ということにして暫定的に確定することを目的としているものと考えられます。
そうすると、就業規則22条2項および労働協約63条2項では、
公職に就任したときはそれ自体で休職とする規定の仕方になっているが、
公職に就任した従業員を特別休職にすることができるのは、
従業員が公職に就任したため長期にわたって継続的または断続的に職務を離れることになり、
当該従業員を働かせても労働契約上の債務の本旨に従った履行が期待できず、
その結果業務の正常な運営が妨げられることになる場合に限られるものと解するのが相当です。
ところで、労働基準法7条は、労働者が労働時間中に公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合には使用者はこれを拒んではならない旨を定めているが、
これは正常な労働関係を前提としたうえで労働契約上の債務の履行と労働者の公的活動との調和を図る趣旨のものであるから、
労働者が公の職務を執行することにより使用者の立場から正常な労働関係が維持できなくなるような場合に当該労働者を休職とし(たとえ、その期間中無給であるとしても)、
ひいては解雇することまで禁止するものではないと解するのが相当です。
してみると、前記のように解釈される就業規則22条2項および労働協約63条2項は、
労働基準法7条に違反するとはいえず、有効というべきです。
【労働基準法7条(公民権行使の保障)】
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
【関連判例】
→「十和田観光電鉄事件と公民権行使の保障」
→「社会保険新報社事件と公職就任を理由とする普通解雇」