三都企画建設事件と休業手当

(大阪地判平18.1.6)

スポンサーリンク










派遣元の判断で、派遣先からの派遣労働者の就労拒絶を受け入れたことにより、

派遣労働者が派遣先での就労が不可能となった場合、

労基法26条にいう「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、土木建築工事の設計監理にたずさわる労働者派遣事業を、

許可を得ることなく営む派遣会社です。

Xは一級建築士、一級土木施工管理技士および一級建築施工管理技士の資格を有し、

土木施工管理技師としてYに派遣社員として」登録していました。

Xは、YとAとの間の「業務協力基本契約」に基づいて、

約4か月間の予定で水道工事の施行管理のために派遣されたが、

Aは約1か月が経過した時点でYに対してXの交代を要請しました。

これを受けて、Yは、Xに就労を中止するよう命じて、代わりの労働者を派遣しました。

Yは、Xに対して、他の派遣先を検討したが、適当な派遣先がなかったため、

結局、Xを解雇しました。

そこで、Xは、Yに対し、本件解雇の無効を主張し、残期間に支払われるはずだった賃金の支払い、

もしくは労働基準法26条に基づく休業手当の支払いを求めて争いました。

スポンサーリンク










【判決の概要】


Xの勤務状況が、Yと派遣先との間の派遣契約に照らして、

債務不履行(不完全履行)となる場合は、

派遣先は、Yに対して、Xの交代を要求することができ(完全履行の請求)、

これにYが応じない場合は、派遣契約を解除することができます。

このように派遣契約上の債務不履行があり、派遣先から交代要請があった場合は、

派遣期間の途中であっても、Xとしては交代を余儀なくされ、

Xの派遣期間は終了することとなり、そのことによって、

派遣元との雇用契約も一旦終了し、

残期間の給与を請求することはできないと解するべきです。

一方、Xの勤務状況が、Yと派遣先との間の派遣契約に照らして、

債務不履行(不完全履行)といえない場合は、

派遣先は、Yに対して、Xの交代を要求したり、

Yがこれに応じないことを理由に、派遣契約を解除することはできません。

この場合、派遣先がXの交代を求め、Xの就労を拒否したとしても、

債務不履行でない限り、Yが派遣先に対する派遣代金の請求権を失うことはないと解します。

もっとも、Xの勤務状況が、債務不履行といえない場合であっても、

派遣先がXの就労を拒絶する場合、XのYに対する賃金請求権の帰趨については、

別に検討する必要があります(また、Yが派遣先の要請に応じて、Xを交代させた場合などについても同様の問題が生じます。)。

和歌山市の工事におけるXの勤務状況に派遣契約上の不完全履行があったと認めることはできません。

しかも、Yによる本件交代命令の理由(解雇事由)は、

Aからのクレームを直接の原因としており、和歌山市の工事におけるXの勤務状況が、

直接の影響を及ぼしているとは考えられません(Yとしては、Aからのクレームを受けない限り、Xを交代させる予定はなかったと思われます。)。

Aから、Xを交代させるよう要請があったこと自体は、

Xの勤務状況に不完全履行の存したことを推定させる事情といわなければなりません。

しかし、Xを交代させた後、Cが行った修正作業がAとYとの間の労働者派遣契約に定められた義務であったとは認められません。

また、交代要請があったのは、

Xが播磨町の工事に従事してから約1か月後のことであるが、

Y代表者は、交代要請の理由をAや播磨町に確認しておらず、

その実際の理由は不明といわざるを得ず、

Xの勤務状況が、AとYとの間の労働者派遣契約の債務不履行に該当するかどうかは不明といわざるを得ません。

播磨町における担当者(Xが、直接の上司と表現する人物)も、

パソコンが苦手であり、Xに(業務の範囲内とは明示されていなかった)業務をいろいろと頼もうとしたが、

これに応じられそうになかったため、

Xの交代を要請しただけである可能性も否定できません。

以上によると、Xの勤務状況が、Yと派遣先との間の労働者派遣契約上の債務不履行事由に該当するとはいえません。

Yとしては、派遣先から、Xの勤務状況が、Yと派遣先との労働者派遣契約上の債務不履行事由に該当すると主張して、

Xの就労を拒絶し、その交代を要請されたとしても、

Xの勤務状況について、これを知る立場になく(その情報は、派遣先企業とXが有していることになります。)、

派遣先の主張を争うことは極めて困難というべきです(派遣先やXから、Yにとって有利な情報を得ることは極めて困難と思われます。)。

このような状況下において、派遣先からXの就労を拒絶された場合、

Yとしては、乏しい資料しかないにもかかわらず、

派遣先によるXの交代要請を拒絶し、債務不履行事由の存在を争って、

派遣代金の請求をするか否かを判断することもまた困難というべきです。

そうすると、Yが、派遣先との間で、債務不履行事由の存否を争わず、

Xの交代要請に応じたことによって、Xの就労が履行不能となった場合、

特段の事情のない限り、XのYに対する賃金請求権(本件では、平成15年5月7日以降の賃金請求権)は消滅するというべきです(民法536条2項の適用はないと考えます。)。

一方、Yの判断により、派遣先との紛争を回避し、

派遣先からのXの就労拒絶を受け入れたことにより、

派遣先におけるXの就労が不可能となった場合は、

Xの勤務状況から、Yと派遣先との労働派遣契約上の債務不履行事由が存在するといえる場合を除き、

労働基準法26条にいう「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、

Xは、Yに対し、休業手当の支給を求めることができると考えます。

【関連判例】


「ノース・ウエスト航空事件と部分ストライキ」
「米軍山田部隊事件と休業手当」
「いずみ福祉会事件と中間利益の控除」