いずみ福祉会事件と中間利益の控除

(最三小判平18.3.28)

スポンサーリンク










使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき、

使用者が支払義務を負う金額を算定する場合、

期末手当等の全額を対象として、

労働者が他の職に就いて得た利益の額を控除することはできるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、昭和48年7月、Yに雇用され、その設置する保育所において、

保母として保育業務に従事してきたが、平成10年10月31日、

その担当を保育業務から清掃整備業務に変更する旨の配置転換命令を受けました。

Yにおいては、従業員に対し、本俸のほか、

期末手当及び勤勉手当(以下、併せて「期末手当等」という。)を支払うものとされ、

保育業務に従事する保母に対しては、

更に特殊業務手当及び特別給与改善手当(以下、併せて「特業手当等」という。)も支払うものとされていました。

Xは、上記配置転換命令を受けるまでは、本俸及び特業手当等を支給されていたが、

Yは、上記配置転換命令を前提として、

平成11年2月分以降は特業手当等を支払わないこととするとともに、

同年3月分以降の本俸及び同月支給の期末手当を減額しました。

さらに、Yは、Xに対し、平成11年4月1日、

Xに用務員を命ずる旨の配置転換命令(以下、清掃整備業務への配置転換命令と併せて「本件各配転命令」という。)をしました。

そして、Yは、Xに対し、平成11年5月15日、同月18日限りXを解雇する旨の意思表示をしました(以下、これによる解雇を「本件解雇」という。)。

そこで、Xは、本件解雇は解雇権の濫用として無効であるとして、

解雇無効の確認及び賃金の支払い等を求めて争いました。

スポンサーリンク










【判決の概要】


本件各配転命令及び本件解雇は、いずれも無効です。

したがって、Yは、Xに対し、Xが保母として保育業務に従事したことを前提として賃金を支払うべきです。

もっとも、Xは、民法536条2項ただし書に従い、

本件期間に他で就労して得た利益を上告人に償還しなければならず、

賃金請求は、この償還しなければならない金額を控除した金額の限度で認容すべきこととなります。

そして、他で就労していた期間に係る賃金に関しては、

労働基準法26条を類推適用し、そこから上記利益の額を同賃金の額の4割の限度で控除した後の金額が支払われるべきです。

使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益(以下「中間利益」という。)を得たときは、

使用者は、当該労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが、

上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当です。

したがって、使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務の額のうち、

平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、

上記中間利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には、

更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(同条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解されます(最高裁昭和36年(オ)第190号同37年7月20日第2小法廷判決・民集16巻8号1656頁、最高裁昭和59年(オ)第84号同62年4月2日第1小法廷判決・裁判集民事150号527頁参照)。

【まとめ】


使用者が労働者に対し労働基準法12条4項所定の賃金に当たる期末手当及び勤勉手当を支払うこととされているという事実関係の下では、

使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき、

使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において、

労働者が同期間中に他の職に就いて得た利益の額が、

当該利益を得た期間における平均賃金合計額の4割を超えた場合、

上記利益を得た期間に時期的に対応する期間に係る期末手当及び勤勉手当の全額を対象として、

上記の平均賃金合計額の4割を超える利益の額を控除すべきです。

【関連判例】


「ノース・ウエスト航空事件と部分ストライキ」
「米軍山田部隊事件と休業手当」
「あけぼのタクシー(民事解雇)事件と中間利益の控除」
「三都企画建設事件と休業手当」