山本香料事件と年俸期間途中での解雇

(大阪地判平10.7.29)

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賞与の支払額につき、それが年額で決められている労働者が、

年度途中で退職した場合には、

賞与の計算方法はどのように判断されるのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、香料の製造販売、化粧品、石鹸原料の販売等を主たる目的とする会社です。

Xは、平成6年11月28日、調香師としてYに雇用されました。

Xの賃金は年額570万円であり、月額38万円を毎月20日に支払い、

残額を賞与として支払う約定でした。

Xの勤務態度は、上司に対して反抗的であり、

過激な言辞を発してその指示に素直には従わず、職場秩序を乱したとして」、

Yは、平成7年6月26日、Xを解雇しました。

そこで、Xは、未払賞与の支払・賃金の支払等を求めて争いました。

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【判決の概要】


Y主張の解雇事由については、以上のとおり認めることができるところ、

その認定した個々の事実については、その一つをとって解雇事由とするには、

いずれもいささか小さな事実にすぎません。

ただ、前項の(3)(7)(9)(10)及び(3)に認定のとおり、

Xは、その上司に当たるY1や経理担当課長のY2に反抗的であり、

過激な言辞を発してその指示に素直には従わず、

また、Aに対しても、不穏当な言動をしているのであるが、

これらを総合すれば、Xには、総じて、

上司たるY1やY2に反抗的で、他の従業員に対しても、

ときに感情的な対応をする傾向があったといわなければなりません。

その原因としては、攻撃的なXの性格面に加え、

Xにはフランスの著名な香料学校の出身であるという自尊心が高く、

Y代表者Bの信頼を得て、東京研究室の重要なポストを与えられることになっていたのに、

その開設に、Y1及びY2が協力的でないと考えていたことにあるかと思料され、

また、平成7年1月31日の事件以後の感情的なしこりが存在していたことも否めないが、

これらを考慮しても、Xの種々の言動は、

部下の上司に対する言動としてみれば程度を超えており、

Y2やAに対する言動も職場の秩序を乱すものといわざるを得ません。

そうであれば、Xを解雇したYの措置は、その効力を否定することはできず、

これを解雇権の濫用とする事由もありません。

賞与の額が年間114万円であったことは、当事者間に争いがありません。

ところで支払時期についての合意があったと認めることができないのであるが、

その支払期は、遅くともその年度末には到来するものであるから、

これが既に到来していることは明白です。

そこで、その支払うべき金額であるが、

その報酬が年額として決められ、賞与の計算方法に特段の合意がないことからすると、

年度途中で退職した場合には、勤務した日数により按分するのが相当です。

してみれば、114万円を365日で除し、

平成6年11月28日から平成7年6月26日までの日数210日を乗じて得た65万5890円から、

Xが受領したことを自認する15万6000円を控除した49万9890円が未払賞与の額と認められます。

【関連判例】


「大和銀行事件と賞与(支給日在籍要件)」
「江戸川会計事務所事件と賞与請求権の発生」
「秋保温泉タクシー事件と賞与請求権」
「須賀工業事件と支給日在籍要件」
「ベネッセコーポレーション事件と退職予定者の賞与減額」
「コープこうべ事件と賞与支給対象期間途中の退職」
「大阪府板金工業組合事件と賞与請求権」