ヤマト運輸事件と退職金の一部支払

(東京地判平19.8.27)

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業務終了後、帰宅途中に酒気帯び運転で検挙された労働者に対して、

懲戒解雇及び退職金の不支給措置は認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、貨物自動車運送事業者であり、

Xは、Yのセールスドライバーとして勤務していました。

平成17年4月15日、業務終了後の飲酒により自家用車を運転中、

酒気帯び運転で検挙(免停30日、ただし講習受講により1日に短縮、罰金20万円)されたが、

Yには報告しませんでした。

平成17年9月5日、運転記録証明の取得により酒気帯び運転の事実が発覚したため、

同年9月5日、Yは、Xを懲戒解雇し、退職金は不支給としました。

Yの就業規則43条では、「業務の内外を問わず飲酒運転及び酒気帯び運転をしたときは懲戒解雇する」旨規定されており、

退職金支給規程6条には、「懲戒解雇の場合は退職金は支給しない。ただし、事情によりその全額または一部を支給することがある」と規定されていました。

そこで、Xは、懲戒解雇の無効及び退職金等の支払いを求めて争いました。

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【判決の概要】


Y社が大手の貨物自動車運送事業者であり、

XがY社のセールスドライバーであったことからすれば、

Y社は、交通事故の防止に努力し、

事故につながりやすい飲酒・酒気帯び運転等の違反行為に対しては厳正に対処すべきことが求められる立場にあるといえます。

したがって、このような違反行為があれば、社会から厳しい批判を受け、

これが直ちにY社の社会的評価の低下に結びつき、

企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあり、

これは事故を発生させたり報道された場合、

行為の反復継続等の場合に限らないといえます。

このようなY社の立場からすれば、所属のドライバーにつき、

業務の内外を問うことなく、飲酒・酒気帯び運転に対して、

懲戒解雇という最も重い処分をもって臨むというY社の就業規則の規定は、

Y社が社会において率先して交通事故の防止に努力するという企業姿勢を示すために必要なものとして肯定され得るものということができます。

そうすると、Xの上記違反行為をもって懲戒解雇とすることも、

やむを得ないものとして適法とされるというべきです。

Xは、大手運送業者のY社に長年にわたり勤続するセールスドライバーでありながら、

業務終了後の飲酒により自家用車を運転中、酒気帯び運転で検挙されたこと、

この行為は、一審の口頭弁論終結時ほどは飲酒運転に対する社会の目が厳しくなかったとはいえ、

なお社会から厳しい評価を受けるものであったこと、

Xは処分をおそれて検挙の事実を直ちにY社に報告しなかったこと、

その挙げ句、検挙の4か月半後、

運転記録証明の取得によりXの酒気帯び運転事実が発覚したことなどからすると、

その情状はよいとはいえず、懲戒解雇はやむを得ないというべきです。

しかしながら他方、Xは他に懲戒処分を受けた経歴はうかがわれないこと、

この時も酒気帯び運転の罪で罰金刑を受けたのみで、事故は起こしていないこと、

反省文等から反省の様子も見て取れないわけではないことなどを考慮すると、

Xの行為は、長年の勤続の功労を全く失わせる程度の著しい背信的な事由とまではいえないというべきです。

したがって、就業規則の規定にかかわらず、

Xは退職金請求権の一部を失わないと解されます。

Xに支給されるべき退職金の額は、少なくともXが受給しえたはずの962万185円の約3分の1である320万円を下ることはないというべきです。

【関連判例】


「小田急電鉄事件と懲戒解雇に伴う退職金不支給」
「ソニー生命保険事件と退職金の不支給条項」
「アイビ・プロテック事件と重大な背信行為と退職金」
「朝日新聞社(会社年金)事件と退職年金支給の停止」
「日本高圧瓦斯工業事件と不信行為と退職金の支給」
「日本コンベンションサービス(退職金請求)事件と背信行為」
「橋元運輸事件と退職金の一部支払」
「幸福銀行事件と退職年金の打切り」