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労働契約上休日が特定されている場合、
業務上必要な場合には休日の振替をなしうることを就業規則等で規定し、
あらかじめ他の日を休日として特定した上で振り替える場合には、
労働者の個別的同意がなくても休日を労働日とすることができるのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、造船、重機械、航空機等の製造等を目的とする会社であり、
Xらは、いずれもYの横浜造船所の従業員です。
Yの横浜造船所では、就業規則により土日が休日と定められていたが、
昭和49年4月11日(木曜日)、12日(金曜日)の両日に国鉄、私鉄、
市営バス等の交通機関の労働組合によるストライキ(以下交通ストという)が行われることを理由に、
Yは、同月13日(土曜日)、14日(日曜日)の休日と振替えて、
11日、12日を休日、13日、14日を出勤日とする休日振替措置(以下本件措置という)を行いました。
なお、Yの就業規則には、
「業務上必要がある場合は前条の休日を他の日に振り替えることがある」との定めが存在していました。
これにより13日、14日の両日が出勤日となったところ、
Xらは、出勤しなかったため、
Yは、両日に出勤しなかったXらの当該賃金分を控除しました。
そこで、Xらは、休日振替は無効であると主張して、
控除された賃金の支払い等を求めて争いました。
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【判決の概要】
Xらは、使用者が一方的に休日振替をなしうる旨の就業規則の定めは、
労基法の精神に違反して無効であると主張するが、
前記就業規則28条1項の定めは、
使用者に無条件かつ恣意的な休日振替を許容するものではなく、
「業務上必要」あるときにのみ振替えうることを定めたものであり、
企業の運営上、休日を変更して他に振替える必要の生ずる場合のあることは容易に理解しうるところであるから、
右内容の就業規則の定め自体が無効であるものとは到底解しえないので、
Xらの右主張は失当です。
Xらは、4月13日、14日の特定した休日をXらの同意なく他に振替えることは、
休日を剥奪したことになり、労基法35条に違反すると主張します。
ところで、4月13日(土曜日)、14日(日曜日)の両日が就業規則所定(27条1項)の特定された休日であることは当事者間に争いがないところ、
前記のとおり、就業規則28条1項によれば、
一定の条件のもとに就業規則所定の休日を他に振替えることができることになっているのであるから、
所定の休日は振替のありうることが予定されたうえで特定されているものというべきであり、
右の定めは就業規則によるものであることから、
その性質上、労働契約の内容をなしているものと解されるので、
使用者は、前記の条件が満たされるかぎり、
特定された休日を振替えることができるものというべく、
たとえ、個々の振替の際に労働者の同意、了解がなくとも、
そのことの故に直ちに休日振替が違法、無効となるいわれはないものと解するほかはありません。
そして、本件においては、4月13日、14日の休日を同月11日、12日に振替えたのみであるから、
後記(三)記載のとおり、労基法35条1項、2項違反の生ずる余地はないので、
したがって、本件措置が同条に違反して休日を剥奪したことにならないことは明らかです。
なお、休日振替は休日労働と異なり休日と就労日とを変更するのみで労働者から休日を奪うものではないから、
右両者の法的性質が同一であることを前提とするXらの主張は失当です。
【労働基準法35条(休日)】
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
◯2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
【まとめ】
労働契約上休日が特定されている場合でも、
業務上必要な場合には休日の振替をなしうることを就業規則等で規定し、
あらかじめ他の日を休日として特定した上で振り替える場合には、
個々の労働者の同意、了解がなくても休日を労働日とすることができます。