高知郵便局計画休暇事件と時季変更権

(最二小判昭58.9.30)

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所属長が年度の初頭において、職員の請求により、

各人別に決定した休暇付与計画による休暇について、

年度の途中において時季変更権の行使は許されるのでしょうか。

【事件の概要】


Xらは、いずれも高知郵便局集配課に勤務し集配業務に従事する郵政事務官です。

Xらの所属長である集配課長が、

昭和46年度の初頭において決定した休暇付与予定計画において、

昭和46年6月26日はX1の計画休暇付与予定日とされ、

同月24日はX2の計画休暇付与予定日とされていました。

集配課長は、同月24日、X1に対し、同月26日の計画休暇付与予定日を変更する旨通知し、

同月23日、X2に対し、同月24日の計画休暇付与予定日を変更する旨通知しました。

しかし、X1が同月26日に、X2が同月24日に、それぞれ欠勤したため、

昭和47年1月13日、上司の出勤命令を無視して無断欠勤に及んだXらに対し、

戒告の処分をしました。

そこで、Xらは、処分の取り消しを求めて争いました。

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【判決の概要】


計画休暇の日数については、所属長が年度の初頭において職員の請求により業務の繁閑等をしんしゃくして各人別に当該年度中の休暇付与予定計画を立て、

これによりその休暇を与えることとされているから、

年度の途中において時季変更権を行使し、

右計画の休暇付与予定日を変更することのできるのは、

計画決定時においては予測できなかった事態発生の可能性が生じた場合に限られるというべきです。

そして、その場合においても、時季変更により職員の被る不利益を最小限にとどめるため、

所属長は、右事態発生の予測が可能になってから合理的期間内に時季変更権を行使しなければならず、

不当に遅延した時季変更権の行使は許されないものと解するのが相当です。

これを本件についてみるに、Xらの所属長は、

昭和46年6月24日に至り同月26日のX1の計画休暇付与予定日を変更し、

同月23日に至りX2の同月24日の計画休暇付与予定日を変更したものであるが、

その変更の理由は、同月27日の参議院議員選挙投票日を控えて、

同月26日及び同月24日の市内3区又は市内50区の要配達郵便物数が平常より増加することが見込まれ、

その中に選挙関係の郵便物が混在している関係で、

右要配達郵便物全部の即日完全配達を期すためには、

右各区に常勤職員2名を配置し、

そのうちの1名としてXらを充てることが必要になったというものです。

このように、本件においては、

計画休暇付与予定日のほぼ直前である同月24日又は同23日になって時季変更権が行使されているが、

もしこれらの日に接した時期になって初めて右事態発生の予測が可能となったものであり、

本件計画休暇付与予定日の変更が不当に遅延してなされたものでないというのであれば、

右変更をもって有効なものと認めることができます。

しかしながら、原審は、高知郵便局集配課においては年度途中の予測できない病気休暇や職員の希望による計画休暇の変更が従来少なくなく、

また、郵便集配業務の特殊性として郵便物数を前もって把握することが困難であるという一般的事情に触れるのみで、

右事態の発生がいつの時点において予測可能となったかについて何ら確定することなく、

殊に参議院議員選挙投票日が相当以前から明らかになっているものであることとの関係について説明せず、

本件計画休暇付与予定日の変更を有効としているのであって、

原判決にはこの点において審理不尽、理由不備の違法があるといわざるをえません。

【労働基準法39条(年次有給休暇)】


使用者は、その雇入れ日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

◯2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄の掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

「六箇月経過日から起算した  「労働日」
       継続勤務年数」  

 一年             一労働日
 二年             二労働日
 三年             四労働日
 四年             六労働日
 五年             八労働日
 六年以上           十労働日

◯5 使用者は、前各号の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

【まとめ】


所属長が年度の初頭において、職員の請求により、

業務の繁閑等をしんしゃくして、

各人別に決定した休暇付与計画による休暇についての年度の途中における時季変更権の行使は、

計画決定時には予測できなかった事態発生の可能性が生じた場合において、

かつ、右事態発生の予測が可能になってから合理的期間内に限り許されます。

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