新国立劇場運営財団事件と労働組合法上の労働者

(最三小判平23.4.12)

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年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で、

期間を1年とする出演基本契約を締結した上、

各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は、

労働組合法上の労働者に当たるといえるのでしょうか。

【事件の概要】


Y財団は、新国立劇場の施設において現代舞台芸術の公演等を行うとともに、

同施設の管理運営を行っている財団法人であり、

年間を通して多数のオペラ公演を主催しています。

Y財団は、毎年、主催するオペラ公演に出演する新国立劇場合唱団のメンバーを試聴会を開いて選抜し、

合格者との間で、8月から翌年7月までの年間シーズンの全ての公演に出演することが可能である契約メンバーと、

Y財団がその都度指定する公演に出演することが可能である登録メンバーに分けて、

出演契約を締結していました。

Xは、新国立劇場合唱団の契約メンバーとして、

平成11年8月から同15年7月までの4シーズンにわたり、

毎年、Y財団との間で出演基本契約を締結した上、

各公演ごとに個別公演出演契約を締結し、公演に出演していました。

Xは、その間、Y財団から、年間約300万円の報酬(超過稽古手当を含む。)を受けていました。

Xが公演への出演や稽古への参加のため新国立劇場に行った日数は、

平成14年8月から同15年7月までのシーズンにおいて約230日でした。

Xは、Y財団から、平成15年2月20日、同年8月から始まるシーズンについて、

試聴会の審査の結果、契約メンバーとしては不合格であると告知されました。

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【判決の概要】


前記事実関係等によれば、出演基本契約は、

年間を通して多数のオペラ公演を主催するY財団が、

試聴会の審査の結果一定水準以上の歌唱技能を有すると認めた者を、

原則として年間シーズンの全ての公演に出演することが可能である契約メンバーとして確保することにより、

上記各公演を円滑かつ確実に遂行することを目的として締結されていたものであるといえるから、

契約メンバーは、上記各公演の実施に不可欠な歌唱労働力としてY財団の組織に組み入れられていたものというべきです。

また、契約メンバーは、出演基本契約を締結する際、

Y財団から、全ての個別公演に出演するために可能な限りの調整をすることを要望されており、

出演基本契約書には、Y財団は契約メンバーに対しY財団の主催するオペラ公演に出演することを依頼し、

契約メンバーはこれを承諾すること、契約メンバーは個別公演に出演し、

必要な稽古等に参加し、その他個別公演に伴う業務でY財団と合意するものを行うことが記載され、

出演基本契約書の別紙「出演公演一覧」には、年間シーズンの公演名、

公演時期、上演回数及び当該契約メンバーの出演の有無等が記載されていたことなどに照らせば、

出演基本契約書の条項に個別公演出演契約の締結を義務付ける旨を明示する規定がなく、

契約メンバーが個別公演への出演を辞退したことを理由にY財団から再契約において不利な取扱いを受けたり制裁を課されたりしたことがなかったとしても、

そのことから直ちに、契約メンバーが何らの理由もなく全く自由に公演を辞退することができたものということはできず、

むしろ、契約メンバーが個別公演への出演を辞退した例は、

出産、育児や他の公演への出演等を理由とする僅少なものにとどまっていたことにも鑑みると、

各当事者の認識や契約の実際の運用においては、

契約メンバーは、基本的にY財団からの個別公演出演の申込みに応ずべき関係にあったものとみるのが相当です。

しかも、契約メンバーとY財団との間で締結されていた出演基本契約の内容は、

Y財団により一方的に決定され、契約メンバーがいかなる態様で歌唱の労務を提供するかについても、

専らY財団が、年間シーズンの公演の件数、演目、各公演の日程及び上演回数、

これに要する稽古の日程、その演目の合唱団の構成等を一方的に決定していたのであり、

これらの事項につき、契約メンバーの側に交渉の余地があったということはできません。

そして、契約メンバーは、このようにしてY財団により決定された公演日程等に従い、

各個別公演及びその稽古につき、Y財団の指定する日時、場所において、

その指定する演目に応じて歌唱の労務を提供していたのであり、

歌唱技能の提供の方法や提供すべき歌唱の内容についてはY財団の選定する合唱指揮者等の指揮を受け、

稽古への参加状況についてはY財団の監督を受けていたというのであるから、

契約メンバーは、Y財団の指揮監督の下において歌唱の労務を提供していたものというべきです。

なお、公演や稽古の日時、場所等は、上記のとおり専らY財団が一方的に決定しており、

契約メンバーであるXが公演への出演や稽古への参加のため新国立劇場に行った日数は、

平成14年8月から同15年7月までのシーズンにおいて約230日であったというのであるから、

契約メンバーは時間的にも場所的にも一定の拘束を受けていたものということができます。

さらに、契約メンバーは、Y財団の指示に従って公演及び稽古に参加し歌唱の労務を提供した場合に、

出演基本契約書の別紙「報酬等一覧」に掲げる単価及び計算方法に基づいて算定された報酬の支払を受けていたのであり、

予定された時間を超えて稽古に参加した場合には超過時間により区分された超過稽古手当も支払われており、

Xに支払われていた報酬(上記手当を含む。)の金額の合計は年間約300万円であったというのであるから、

その報酬は、歌唱の労務の提供それ自体の対価であるとみるのが相当です。

以上の諸事情を総合考慮すれば、契約メンバーであるXは、

Y財団との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当です。

【関連判例】


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