福井労基署長(足羽道路企業)事件と業務遂行性

(名古屋高金沢支判昭58.9.21)

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労働者が会社(使用者)の実施した忘年会に出席し、

その終了後、同会場付近で交通事故にあって負傷した場合、

業務上の負傷といえるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、A株式会社に勤務し、道路標識、白線等の設置作業に従事していました。

昭和51年12月21日A主催の宿泊を伴う会合(以下本件会合という)に出席しました。

Xは、会合終了後の午後11時ころ、同ホテルの玄関付近で、

ひき逃げ事故にあい、頭部等を負傷して意識不明のまま倒れているところを発見されました(以下本件事故という)。

Xは、直ちに病院に収容されて応急手当を受け、翌22日大学病院入院し、

右側頭骨・頭蓋底骨折、左急性硬膜下血腫、脳挫傷、

右肩・右腰・右肘擦過傷・挫創・打撲傷の傷病名のもとに加療し、

Xの意識は回復しないまま昭和52年3月16日、市立総合病院に転医して入院加療を継続し、

現在に至っています。

Xの母親Bは、昭和52年11月9日、Xの代理人としてX名義で、

労働者災害補償保険法(以下労災保険法という)による休業補償給付の請求をしたところ、

Yは、昭和53年2月28日、Xの傷病が業務上の事由によるものとは認められないとの理由で休業補償給付を支給しない旨の決定(以下本件処分という)をしました。

そこで、BはXの代理人として、審査請求をしたが、棄却されたので、

再審査請求をしたが、それも棄却されました。

そこで、本件処分の取り消しを求めて争いました。

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【判決の概要】


当裁判所も、Xに対する休業補償給付を不支給とする本件処分は適法であって、

これが取消を求めるXの本訴請求は理由がないから棄却すべきであると判断します。

Xは、事業主が労務管理上、懇親会等の対内的社外行事を行うことが必要であると判断し、

管理職が労働者に参加を要請し、通常勤務日に参加者を出勤扱いとして行う社外行事に、

労働者が、事実上であっても、事業主の意向にそい、

これに参加せざるをえなかった場合には、当該労働者が世話役、

あるいは幹事役でなくとも、事実上従属的労働関係のもとにあったのであるから、

労働者の社外行事参加について業務遂行性を認めるべきであり、

したがってXの本件会合への参加には業務遂行性があると主張します。

しかしながら、労働者が事業主(使用者)主催の懇親会等の社外行事に参加することは、

通常労働契約の内容となっていないから、

右社外行事を行うことが事業運営上緊要なものと客観的に認められ、

かつ労働者に対しこれへの参加が強制されているときに限り、

労働者の右社外行事への参加が業務行為になると解するのが相当です。

前記認定事実(原判決引用)によれば、

本件会合は、Aが経費の全額を負担しているが、

従業員の慰安と親睦を目的とするものであって社会一般に通常行われている忘年会と変りはないから、

本件忘年会を行うことが右会社の事業運営上緊要なものとは認められず、

また右会社役員が従業員に対し、特に都合が悪い場合は格別、

できるだけ参加するようにと勧め、

参加者を当日出勤扱いにする旨伝えたことは認められるもののXに対し本件忘年会に参加することを強制した事実は認められません。

したがってXが本件忘年会に参加したことを業務行為と解することはできず、

右忘年会参加について業務遂行性を認めることはできません。

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