三井倉庫事件と試用期間中の解雇

(東京地判平13.7.2)

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3か月の見習期間を設けて採用された労働者が、

平易な作業であってもミスを繰り返したため、

2か月見習期間が延長されたが、

それでもミスを繰り返したため解雇されたが、

当該解雇は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、倉庫業を営む会社です。Xは、見習期間を3か月としてYに採用され、

関東支社の事務所に配属されました。

Xが担当する業務は比較的平易な内容であるにもかかわらず、

頻繁にミスを繰り返すことから事務処理能力が欠如しており、

また業務に取組む態度等にも問題があるなど勤務状況に難点があるとの理由で、

見習期間を2か月延長する旨が命じられました(就業規則には見習い期間延長・短縮規定がある)。

しかし、延長された見習期間中もミスを繰り返したため、

右期間満了の際に、Yは、従業員として不適格と認められるとして、

Xを解雇しました。

そこで、Xは、解雇は無効であると主張して、

労働契約上の地位確認、賃金等の支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


Y従業員として求められる能力や適性は、

一般的な能力から直ちに推し量ることのできるものではなく、

Yの業務内容等から判断すべきところ、これが倉庫業であること等からすると、

Y従業員としては事務処理の堅実性、確実性や職務命令に対する忠実性こそが重要であり、

創造性や独創性はむしろ業務の妨げとなりかねないとも考えられるのであり、

Xが一般的な能力に劣るところはないこととY従業員として求められる能力や適性を著しく欠くこととは矛盾しません。〔中略〕

また、Xは貨物の流れや業務内容の基本を教えられなかったため、

簡単なことが簡単とは思えずにミスをしたとも供述するが、

それらは決して複雑なことではなく、

顧客からの依頼書を見れば推測のつく程度のことであり、

しかも、7月ころにはそのことを理解したとしながら(書証略)、

さらに看過しがたいものを含めミスを繰返しており、

同供述は採用できません。〔中略〕

今後の改善の見込みについても、見習期間を延長して約4か月にわたり教育指導をし、

Xの認識としても仕事が単純なことだと理解し、

いじめも収まってきた後の、7月以降も前記のようなミスが頻発している以上、

今後の改善の見込みも期待できないし、

一般論としても不慣れ、誤解による過誤は改善の可能性があるが、

他方ケアレスミスや仕事に対する興味が持てない事によるミスは本採用になって仕事に慣れれば余計に多くなる恐れがあります。〔中略〕

普通解雇事由が存する場合でも、当該具体的な事情の下において、

解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できない場合は、

当該解雇の意思表示は権利の濫用として無効となるというべきであるが、

前記1及び2の事実関係の下では、

本件解雇が試用期間中のものであることを考慮するまでもなく、

著しく不合理であると認めるには至りません。

他にこれを認めるに足りる証拠ありません。

【まとめ】


従業員として求められる能力や適性を著しく欠いており、

就業規則上の普通解雇事由(従業員として不適格と認められるとき)が存し、

本件解雇が試用期間中のものであることを考慮するまでもなく、

著しく不合理であると認めるには至らないことから、

本件解雇は有効です。

【関連判例】


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