ブレーンベース事件と試用期間中の解雇

(東京地判平13.12.25)

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即戦力と期待されて採用された労働者が、

期待に沿う業務の遂行ができないと判断され、

試用期間中に解雇されたが、

当該解雇は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、医療材料・機器の製造販売を営む会社です。

Yは、Xの採用に際し、パソコンに精通しているなどといったXの発言及び職務経歴書の記載に照らし、

Xがパソコン操作及び営業活動の経験と能力を有すると判断し、

入社後3か月間は試用期間であることを条件に、

平成11年1月6日、Xと雇用契約を締結しました。

Xの業務は、販売商品の発送業務、

商品発表会の開催案内をパソコンのファックスモデムを利用して全国歯科医への送信等を行い、

将来的には商品知識習得後、

顧客となるべき歯科医等への商品説明業務にも従事することが期待されていました。

しかし、Xは、歯科医が緊急を要するとして発注してきた依頼に速やかに応じない態度をとり、

また、採用面接時にパソコン使用に精通していると述べたにもかかわらず、

それほど困難でない作業も満足に行うことができないほか、

会社業務にとって重要な商品発表会の翌日には参加者にお礼の電話等をするなどの業務が行われ社員は必ず出勤するという慣行になっているにもかかわらず、

休暇を取得するなどしたことを理由に、

試用期間満了直前の平成11年4月1日に解雇されました。

そこで、Xは、本件解雇は解雇権濫用にあたるなどと主張して、

労働契約上の地位確認及び賃金の支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


Xの入社時から本件解雇時まではいまだ試用期間であったところ、

一般に、試用期間の定めは、当該労働者を実際に職務に就かせてみて、

採用面接等では知ることのできなかった業務適格性等をより正確に判断し、

不適格者を容易に排除できるようにすることにその趣旨、目的があるから、

このような試用期間中の解雇については、

通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められるというべきです。

しかし、一方で、いったん特定企業との間に一定の試用期間を付した雇用関係に入った者は、

本採用、すなわち、当該企業との雇用関係の継続についての期待を有するのであって、

このことと、上記試用期間の定めの趣旨、目的とを併せ考えれば、

試用期間中の解雇は、客観的に合理的な理由が存し、

社会通念上相当と是認される場合にのみ許されると解するのが相当です。

本件においては、その試用期間が上記のような趣旨、目的とは異なる趣旨、目的にあるものであるとはうかがわれないから、

本件の試用期間も上記趣旨、目的にあるものと認められ、

そうすると、試用期間中である本件解雇に関し、その有効性の判断に当たっては、

上記の基準が妥当すると解すべきです。

上記2の認定にかんがみれば、本件解雇は、

客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当と是認される場合に当たると解するのが相当です。

【関連判例】


「三菱樹脂事件と均等待遇」
「大日本印刷事件と採用内定」
「雅叙園観光事件と試用期間の延長」
「ブラザー工業事件と長期の試用期間」
「テーダブルジェー事件と試用期間中の解雇」
「神戸弘陵学園事件と試用期間」
「三井倉庫事件と試用期間中の解雇」
「新光美術事件と本採用拒否」
「ニュース証券事件と試用期間途中の解雇」
「医療法人財団健和会事件と試用期間途中の解雇」