明石運輸事件と就業規則と労働協約の関係

(神戸地判平14.10.25)

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賃金協定で定められた賃金に関する基準を変更する就業規則の変更は、

有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、一般区域貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社です。

Xらは、いずれもYの従業員であり、H労働組合兵庫合同支部(平成11年10月の組織合同前はI労働組合東播支部)の下部組織である分会の分会員です(以下、H労働組合兵庫合同支部、組織合同前のI労働組合東播支部及び分会をいずれも「組合」という。)。

Yの従業員は50名弱であり、そのうち40名弱がトラック及びトレーラーの運転手であり、

Xらは、Yにおいてトラック運転手として勤務していました。

Xらは、Yに対し、①平成9年年末から同11年年末まで合計5回の一時金支給につき、

格差支給を受けたことにより損害を被ったと主張して、

不法行為に基づく損害賠償を請求するとともに、

②平成12年2月分から同13年10月分までの支給を受けた各給与につき、

Yの支給額は、賃金協定に反してなされた無効の就業規則及び給与規定の改定に基づく支給であり、

Xらは賃金協定に基づく賃金請求権を有すると主張して、

その受給額と賃金協定に基づく賃金との差額賃金を請求しました。

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【判決の概要】


労基法92条1項は、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない旨を定めているところ、

本件就業規則変更は、独立の労働協約である本件賃金協定の存続中になされたものであるので、

改正就業規則等の規定が本件賃金協定に反しないかが検討されなければなりません。

労基法92条1項が、就業規則は労働協約に反してはならないとしているのは、

就業規則の内容が、労働協約中の労働条件その他労働者の待遇に関する基準、

すなわちいわゆる労働協約の規範的部分に反してはならないとの趣旨であり、

かつ、有利にも不利にも異なる定めをしてはならない趣旨と解されます。

したがって、就業規則の内容が労働協約の基準を下回る場合はもとより、

就業規則の内容が労働協約の基準を上回る場合であっても、

当該労働協約が就業規則によってより有利な定めをすることを許容する趣旨でない限りは許されず、

それら労働協約に抵触する就業規則の規定は無効です。

そこで、これを本件についてみるに、

改正就業規則等が本件賃金協定で定められた賃金に関する基準を変更するものであること、

すなわち、本件賃金協定の規範的部分を変更するものであること、

及びその変更内容が本件賃金協定の基準を下回るものであることは、

前記争いのない事実等によって明らかであると認められます(Yは、改正就業規則等は、従業員の実績次第で本件賃金協定に基づいて算定される以上の給与を受け取ることを可能とするものであるから、本件賃金協定の内容を不利に変更したものではないと主張し、Y代表者の地労委における証言記録〔甲40~42〕及び同代表者本人の供述は一応これに沿うが、これを具体的に示す証拠は何ら存在せず、これを採用することはできない。)。

そうすると、改正就業規則等が、

本件賃金協定に反することは明らかであるから、

改正就業規則等中、本件賃金協定に抵触する賃金に関する部分の規定は無効です。

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