シンワ事件と事業場の過半数代表者の意見聴取義務

(東京地判平10.3.3)

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使用者が就業規則を作成し、行政官庁に届け出る際、

労働者の代表としての資格を欠く者の意見書を添付して届け出た場合、

就業規則は有効に成立しているのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、カーステレオの開発、製造、販売業を営む会社です。

Xは、品質統括部長として勤務していました。

Xは、出退勤時刻を守らず、

外出するにあたっても行き先や所要時間を知らせないことが多く、

また、物品購入の領収書を提出し代金を請求するのみでその内容を説明せず、

あるいは海外出張中の旅費の精算手続において、

「接待」費目のタクシー代等として高額の請求をするものの、

内容の説明を求められても納得のいく回答をしなかったこと等、

勤務状況不良あるいは周囲の人間とのコミュニケーション不足等を理由に解雇されたました。

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【判決の概要】


右に認定したXの行状の数々は、

その一つ一つを個別に取り上げる限り必ずしも重大な不都合とはいえないものの、

これを全体として見た場合、

組織として活動している会社にとって決して看過することのできない事柄であるというべく、

これは、Yの就業規則17条3号所定の「仕事の能力が甚だしく劣るか、又は甚だしく職務に怠慢で担当業務をはたし得ないと認めたとき」に該当するか、

少なくとも同条6号の「その他前各号に準ずる程度のやむを得ない事由があるとき」に該当するというべきです。

もっとも、Xの担当業務の中核をなす品質管理の分野においては、

Yもその後顧問契約を締結してその専門的知識による貢献を期待していたように、

Xは十分その職責を果たし得たことが窺われるけれども、

それも組織においては他の人間とのかかわり合いのなかで所期の目的が達成できる筋合いである以上、

YがXについて従業員としての適格性に疑問を抱いたとしても無理からぬものがあるといえます。

したがって、このような事情も右の判断を左右するものではありません。

そして、XはいきなりYの品質統轄部長として採用されたものであること、

YはXに対し、その行状を改めるよう一定の猶予期間を設けて注意を促し、

改善されない場合の措置についても予め告知して警告を発していること、

本件解雇の意思表示をする際には、同時に顧問契約締結の提案も行っており、

Xもこれを前向きに受けとめていたことなど、

先に認定したXの雇用及び本件解雇に至る経緯からすれば、

本件解雇をもって解雇権の濫用ということはできず、

他にこれを認めるに足りる証拠はありません。

なお、Xは、Yの就業規則は、従業員の代表としての資格を欠く者の意見書を添付して届け出られており、

労働基準法90条に違反して無効である旨主張するが、

従業員の意見の聴取手続について同条の規定に違反するとしても、

そのことから直ちに就業規則の効力を失わせるものではないと解すべきであるから、

Xの右主張は採用できません。

【労働基準法90条】


使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

◯2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

【関連判例】


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