コンドル馬込交通事件と研修費用

(東京地判平20.6.4)

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労働者が研修費用支払を免責されるため就労期間が2年という返還条項は、

労働者の自由意思を不当に拘束し、

労働関係の継続を強要する違約金の定めといえるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、一般乗用旅客自動車運送業等を営む株式会社です。

Yは、平成17年4月から同年6月6日まで、

Yにおいてタクシー乗務員として勤務していました。

Yは、Xがスポーツ新聞に掲載した募集広告を見て、

Xの乗務員に応募したのであったが、普通第2種免許を保有していませんでした。
 
Yは、雇用契約の際、「全日本交通安全教育センターに懸かる普通2種免許取得費用借入れ誓約書」に署名するとともに、

Xにおける研修条件等を定めた「養成乗務員(教習生)取扱規則」と題する書面に署名押印しました。(誓約書には、「私は、貴社の乗務員となるべく普通2種免許を取得するため、全日本交通安全教育センターの主催する富士モータースクール合宿所に於いて9日間の教習を受講します。つきましては、消費税を含む受講費¥231,000円を貴社の乗務員として就業することを条件に、借用することを承諾します。返済については貴社、養成乗務員規定の免責事項によるものとして、満期を待たず、やむを得ず退職する際には、受講費全額を返済することを誓約いたします。」との記載があった。)

Yは、平成17年4月26日からXで勤務を始め、

同年4月29日から同年5月7日までの間9日間、

全日本交通安全教育センターにおいて研修を受けました。

Xは、研修費用19万5000円を立替払いしました。

Yは、平成17年6月7日ころ、Xに対し、

雇用契約の解約の申込みをし、Xは、これを承諾しました。

Yは、現在、第2種免許を保有し、別のタクシー会社で勤務しています。

そこで、Xは、Yに対して、給与の前払金、

業務に必要な免許取得のための研修費用の返還等を請求しました。

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【判決の概要】


Yは、本件雇用契約の締結に際し、本件誓約書及び養成乗務員取扱規則に署名押印して、

Xとの間で、研修費用返還条項を前提として、

本来Yが負担すべき費用をXが立替払することで、

交通センターでの研修を受けることを合意したものと認めるのが相当です。〔中略〕

第2種免許の取得はXの業務に従事する上で不可欠な資格であり、

その取得のための研修はXの業務と具体的関連性を有するものではあります。

しかしながら、第2種免許はY個人に付与されるものであって、

Xのようなタクシー業者に在籍していなければ取得できないものではないし、

取得後はXを退職しても利用できるという個人的利益がある(現にXはこの資格を利用して転職している。)ことからすると、

免許の取得費用は、本来的には免許取得希望者個人が負担すべきものです。

そして、研修費用返還条項によって返還すべき費用も20万円に満たない金額であったことからすると、

費用支払を免責されるための就労期間が2年であったことが、

労働者であるタクシー乗務員の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要するものであるとはいい難いです。

したがって、研修費用返還条項は、

本件雇用契約の継続を強要するための違約金を定めたものとはいえず、

労働基準法16条に反しないと解するのが相当です。

【労働基準法16条(賠償予定の禁止)】
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

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