バイエル薬品事件と職場規律違反

(大阪地決平9.7.11)

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会社に無断で会社名で高額な物品を購入し、

会社にその代金を支払わせ、

また、取引先から会社への過払の返済金を受領しつつ、

それを会社に入金しなかった労働者に対する懲戒解雇は、

有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、医薬品等の輸入、販売等を目的とする会社です。

Xは、Yの研究開発部門に勤務していました。

Xは、Yに無断でY会社名で約1500万円相当の物品を購入して、

Yにその代金を支払わせ、

また、取引先からYの過払の返済金10万円を受領しつつ、

それを会社に入金しませんでした。

そのため、Yは、Xを業規則の規定に基づいて懲戒解雇しました。

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【判決の概要】


したがって、Xの主張はその前提を欠くこととなり、

本件機器がXの業務に必要であったとは認め難いです。

以上の本件機器の不正購入は、Y就業規則18条3項のうち、

「会社の諸規則に違反し、又は会社の指示命令に従わず故意に会社の秩序を乱した者」(同項2号)、

「許可なく会社の金品を持出し、融通使用した者」(同項4号)及び、

「故意又は過失により業務に支障を生じさせ、又は会社に損害を与えた者」(同項5号)に該当することは明らかです。

しかも、その購入代金は総額で1443万3148円にのぼるのであり、

企業秩序維持の観点からすると、看過し得ない秩序違反というべきです。

証拠及び審尋の全趣旨によれば、Xが申立外A会社に対して、

本件機器の購入代金として、伝票上は、

Xが指示した試薬類を記載させ、

金額が伝票記載のものと機器の購入代金とを合致させるように指示していたが、

必ずしも、これが一致せず、約10万円の過払いが生じ、

これについて、Xが平成8年4月26日にB医大において10万円を申立外A会社の代表取締役であるCから受け取っていることが認められます。

Xは、右金員は申立外A会社がB医大のアルバイト女性に対して雇っていたことについてのアルバイト料であると主張します。

これを認めるに足りる適確な証拠はないものの、

仮にX以外の者に供する目的であったとしても、

Yが本来支払義務を負うものでないことは明らかというべきであり、

右認定のように10万円がYに対する過払い金の精算としてXに支払われたものである以上、

Y就業規則の懲戒事由に該当すると認められます。

【関連判例】


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