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会社の要職にありながら、許可を得ないで、
他の会社の代表取締役となり、
会社に関連する取引をして利益をあげた労働者は、
懲戒解雇の対象となるのでしょうか。
【事件の概要】
Y社の経理部長であるXが、会社の仕入・取引につき、
自分が代表取締役をやっていたA社を介在させ、
利益を上げていたことにつき、
Y社が知るところとなり、
釈明を求めたにもかかわらず欠勤を続け、
鍵等の提出命令にも応じませんでした。
このため、Xは、懲戒解雇されました。
そこで、Xは、懲戒解雇の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
Y会社の就業規則〔中略〕によれば、
懲戒解雇ができる場合として66条1号に「正当な理由なく無断欠勤が七日以上におよび出勤の督促に応じなかった者」、
2号に「職務上、上長の指揮命令に従わず、職場の秩序を乱した者」が定められているところ、
Xの前項7で認定した行為は就業規則66条1、2号に定める懲戒解雇事由に該当するというべきです。
そこで、本件懲戒解雇に懲戒権の濫用となるべき事由があるかについて判断するに、
本件懲戒解雇に至った事情として前項4ないし6で認定したようにXがY会社の経理部長でありながら、
A商事の代表取締役となり営業行為をしたことがあり、
これをどう評価するかの問題があります。
思うに、XはY会社の経理部長であるから、
Y会社に対してその職務を誠実に履行する職務専念義務ないし忠実義務を負うものであり、
許可を得ることなく、他の会社の代表取締役となり、
Y会社に関連する取引をして利益をあげるということは、
重大な義務違反行為であるといわなければなりません。
本件懲戒解雇の背後にあるこの重大な事情をも考慮して、
本件懲戒解雇の効力を判断するに、本件懲戒解雇は相当であって、
懲戒権の濫用をうかがわせる事情は認められず、
本件懲戒解雇は有効であるというべきです。
【関連判例】
→「明治乳業事件と無許可でのビラ配布」
→「目黒電報電話局事件と休憩時間」
→「バイエル薬品事件と職場規律違反」
→「わかしお銀行事件と非違行為」
→「崇徳学園事件と非違行為」
→「長野電鉄事件と企業の風紀を乱す行為」
→「豊橋総合自動車学校事件と企業の風紀を乱す行為」
→「小川建設事件と労働者の二重就職」
→「十和田運輸事件とアルバイト」
→「都タクシー事件とアルバイト」
→「東京プレス工業事件と無断遅刻・欠勤」
→「日経ビーピー事件と職務怠慢」
→「関西フエルトファブリック事件と部下の不祥事」