十和田運輸事件とアルバイト

(東京地判平13.6.5)

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運送会社で運転手として働く労働者が、

許可を得ずに年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由に解雇されたが、

当該解雇は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、運送会社Aから営業譲渡を受けて設立した貨物運送等を業とする株式会社です。

Xらは、Yの従業員で家電製品の各小売店への配送業務に従事していました。

Xらは、運送先の店舗より家電製品の払下げを受けて、

有限会社Bのリサイクル部に搬入し代価を受けていました。

Xらの行為が勤務時間中にかつYの車両を使用して行っていたことが、

職務専念義務違反・就業規則各規定に違反するとして、

Yは、Xらを懲戒解雇しました。

そこで、Xらは、解雇は無効であると主張して、

雇用契約上の地位確認及び賃金支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


Yにおいて、本件各解雇当時本件就業規則以外の就業規則が存在することについての主張、

立証のない本件においては、本件各解雇当時、

Yには就業規則は存在しなかったというほかはなく、

懲戒解雇は、原則として就業規則等の規定を前提として初めてこれを行うことができると解されることに照らせば、

Yは、本件各解雇当時、従業員を懲戒解雇することはできなかったというべきです。

よって、本件各解雇は、懲戒解雇として無効です。〔中略〕

懲戒解雇以外の類型による解雇(以下一般の用例に従い、これを「普通解雇」という)が懲戒解雇よりも労働者にとって有利であると考えられる場合もある(一般にはそのような場合が多いものと考えられる)から、

懲戒解雇の意思表示を普通解雇の意思表示に転換したものとみることが必ずしも不相当であるとまではいえないものと解されます。

もとより、この場合であっても、

使用者が懲戒解雇に固執しないとの限定が付される必要があるが、

本件において、Yが懲戒解雇に固執しないことは明らかであるから、

本件各解雇の意思表示は普通解雇の意思表示とみることができる余地もあるというべきです。〔中略〕

Xらが行った本件アルバイト行為の回数が(3)ウの程度の限りで認められるにすぎないことに、

証拠(書証略、原告X1本人、原告X2本人)及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、

Xらのこのような行為によってYの業務に具体的に支障を来したことはなかったこと、

Xらは自らのこのような行為についてCが許可、

あるいは少なくとも黙認しているとの認識を有していたこと(Xらは、C自身が、Yの代表者として、このような行為を了承していた旨主張し、上記各証拠中にはこれに沿う部分があるが、反対証拠もある(書証略、Y代表者本人)ことに照らせば、これを認めるには至らない。しかし、そうであるからといって、Xらが上記のような認識を有していたとの認定は妨げられない)が認められるから、

Xらが職務専念義務に違反し、あるいは、Yとの間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできません。

以上の次第であって、本件各解雇を普通解雇としてみた場合であっても、

本件各解雇は解雇権の濫用に当たり、無効です。

【関連判例】


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