東京プレス工業事件と無断遅刻・欠勤

(横浜地判昭57.2.25)

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会社に無断で遅刻、欠勤を繰り返した労働者が、

懲戒解雇処分されたが、

当該処分は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、自動車部品を製造する会社です。

Xは、大学院終了後、Yに将来のスタッフ候補者として採用されました。

Xは、半年間に24回の無届けの遅刻と14回の欠勤を繰り返しました。

Yは、この間に、上司を通して再三Xに注意をするとともに、

反省を促し将来を戒めるため始末書を提出させる譴責処分を行いました。

しかし、その直後2度遅刻を繰り返し、人事課長より再度注意を受けました。

そこで、Yは、Xの就労の意思の有無の確認をしたところ、

反省の意を表明したので、訓戒処分にとどめました。

しかし、その後も無断欠勤・遅刻が続き、改善の跡が見られないため、

Yは、就業規則及び労働協約に基づき、Xを懲戒解雇しました。

これに対し、Xは、懲戒解雇の無効を主張し、

地位保全等の仮処分を求めて争いました。

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【判決の概要】


Xの昭和51年9月から昭和52年2月までの6か月間の遅刻回数は24日、

欠勤回数は14日であり、この間、Xが就労すべき日数は、

前掲証拠によれば、合計124日(別紙(2)遅刻、欠勤一覧表(1)出勤日数欄、欠勤日数欄及び有給休暇日数欄の合計)であることが一応認められるから、

完全な就労をした日数は全体の69パーセント強にすぎないことはY主張のとおりです。

ところで、(書証・人証略)を総合すれば、Yにおいては、

従業員が遅刻又は欠勤する場合には、

事前に電話あるいは同僚にことづける形で所属係長又は課長に連絡すべきことが、

それぞれ定められていたものと一応認められるところ、

(書証・人証略)を総合すると、Xの前記遅刻、欠勤は、

昭和51年12月頃の1回の遅刻を除きすべて事前の届出がなかったことが一応認められ、

右認定に反する(書証略)中の記載は右各証拠に照らして措信し難く、

事前に届出のない遅刻、欠勤は、

Yの業務、職場秩序に混乱を生ぜしめるものであることが明らかであるから、

以上によれば、Xには就業規則第41条第3号、

労働協約第30条第3号の「正当な理由がなく遅刻、早退または欠勤が重なったとき」との懲戒解雇事由があったものと一応認められます。

【関連判例】


「日経ビーピー事件と職務怠慢」
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