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工場の出入口で行われた携行品検査を拒否した労働者が懲戒解雇されたが、
当該処分は有効なのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、陶食器、衛生陶器等の製造・販売会社を行う会社です。
Yの従業員であるXは、Yの工場の出入口で行われた携行品検査において、
守衛から手提げ袋をあけて中身をみせるように求められたが、
これを拒否しました。
Yは、Xの携帯品拒否行為は、
就業規則64条5号にいう「職場の秩序をみだし、またはみだそうとしたとき」に該当するとし、
Xを懲戒解雇しました。
そこで、Xは、懲戒解雇の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
使用者がその企業の従業員に対して行なういわゆる所持品検査は、
その性質上常に人権侵害のおそれを伴うものであるから、
これを必要とする合理的理由に基づいて、
一般的に妥当な方法と程度で、
しかも就業規則その他明示の根拠に基づき、制度として、
職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければ適法とならないものといわなければなりません。
そこでYにおける所持品検査につき右要件を検討するに、
前記第二項において認定したように、
Xの勤務するY本社においては各所に多量の銅地金類、金属製品、半製品が使用、貯蔵されており、
外部への持出しも不可能ではないこと、
そのため他の多くの企業と同様に就業規則で従業員の所持品検査制度を規定していること、
その方法は従業員の工場出入の際の一般的監視の他に、
一斉検査として退勤者全員を対象として、
日常携帯品以外を所持していると思われる者に対し質問し、
外から所持品にさわり、まれには所持品の中味を見せるよう求める程度であって、
着衣にさわつたりその他身体検査に類するようなことは行われていないことが認められるので、
Yの業態からすると、より合理的な会社財産管理の方策を講じ、
従業員に対する所持品検査制度を廃止することも可能であり、
且つそれが望ましいことであるにせよ、
特にYにおける所持品検査が身体検査に類するようなことは行わず、
したがって被検査者に不当に羞恥心、屈辱感を与え、
人権を侵害するおそれが少ないことを重視すると、
未だもって右検査を違法と断定することはできず、
したがって就業規則36条2項も公序良俗に反し無効であるとはいえないというべきです。(中略)
Xが本件携帯品検査拒否の際、
職場秩序をみだすことの意図もしくは認識をもっていたことを認めるには充分とはいえず、
いわんや本件拒否行為により現実に職場秩序をみだしたことは認めることができません。
すなわち、Xの本件携帯品拒否行為は、
就業規則64条5号にいう「職場の秩序をみだし、またはみだそうとしたとき」に該当しないということになり、
同条の懲戒処分をなす前提たる懲戒事由は認められないことになります。
【関連判例】
→「西日本鉄道事件と所持品検査」
→「芸陽バス事件と所持品検査」
→「帝国通信工業事件と所持品検査」
→「サンデン交通事件と所持品検査」
→「日立物流事件と所持品検査」
→「富士重工業事件と調査協力義務」
→「東京電力事件と調査協力義務」