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バスの乗務員である労働者が、
通勤用の自家用車の社内の私物の検査を拒否したことで懲戒解雇されたが、
当該処分は有効なのでしょうか。
【事件の概要】
バス会社であるYは、バス乗務員であるXに対して、
Xの通勤用の自家用車の車内の私物を検査しようとしたが、
Xは、これを拒否しました。
Yは、所持品検査を拒んだことを理由に、
Xを懲戒解雇しました。
そこで、Xは、懲戒解雇の無効を求めて争いました。
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【判決の概要】
所持品検査はさきに説示したように人権侵害の弊害を伴うものであるから、
その方法や程度は妥当なものでなくてはなりません。
検査の対象となるものは乗務と密接に関連するもの、
すなわち、服装検査のほか、乗務に際し会社から命ぜられて業務上携帯した物品、
乗務に際し特に携帯した私物に限られます。
乗務員が通勤に使用する自家用車内は、
完全に個人の領域であるから、原則的には検査の対象となりません。
次に述べるような特段の事情のある場合に始めて検査が許されます。
所持品検査は乗務時の状態をそのままさらさなくては意味がないからといって、
所持品検査前あるいは所持品検査中に、
係員の許可なく乗務員が自家用車内に乗り込んだときは、
乗務員に対し自家用車内から出ることを求めることができます。
同じように、係員の許可なく乗務員が検査の対象となる私物などを自家用車内に持ち込んだときは、
乗務員に対しこれを車内から取り出して提示することを求めることができます。
そして、乗務員が許可なく自家用車内に乗り込んだうえ車内に金品を隠したり、
許可なく私物などを持ち込んだうえその中の金品を隠したりするように、
車内において不正取得を疑わせる客観的な行為をしたときに、
始めて車内検査そのものを求めることができます。
許可なく自家用車に乗り、許可なく私物などをこれに入れたとしても、
右のような客観的行為はなく、単に係員がその態度は不審だと思っただけで、
車内検査を求めることができるわけではありません。
【関連判例】
→「西日本鉄道事件と所持品検査」
→「東陶機器事件と所持品検査」
→「帝国通信工業事件と所持品検査」
→「サンデン交通事件と所持品検査」
→「日立物流事件と所持品検査」
→「富士重工業事件と調査協力義務」
→「東京電力事件と調査協力義務」