国鉄中国支社事件と私生活上の非違行為

(最一小判昭49.2.28)

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職場外でされた職務遂行に関係のないところで、

公務執行妨害罪で懲役6月執行猶予2年の判決を受けた労働者が、

免職処分を受けたが、

当該処分は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


昭和34年9月、鉄道会社Yの国労組合員Xは、

中四国教育課程研究協議会の開催反対運動に参加するため山口県湯田温泉に赴き、

警備の警察官多数と国労組合員ら反対運動者多数との間に生じた混乱の最中、

警察官Aの公務を妨害したことから逮捕・起訴され、

懲役6月執行猶予2年の判決を受け、

同判決は昭和42年2月14日確定しました。
 
右判決確定直後の昭和42年2月28日、

Yは、Xの所為は、

Y社の懲戒規定の「著しく不都合な行いのあったとき」に該当するとして、

免職処分に付しました。

そこで、Xは、雇用関係の存続確認等を求め争いました。

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【判決の概要】


原審確定の本件所為は、職場外でされた職務遂行に関係のないものではあるが、

公務執行中の警察官に対し暴行を加えたというものであって、

著しく不都合なものと評価しうることは明らかであり、

それがXの職員の所為として相応しくないもので、

Yの前述(略)の社会的評価を低下毀損するおそれがあると客観的に認めることができるものであるから、

国鉄法31条1項1号及びそれに基づく国鉄就業規則66条17号所定の事由に該当するものというべく、

これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができます。

原審確定の事実に徴すると、

本件所為は、公務執行妨害罪にあたる重大な犯罪行為であって、

その具体的な態様も相当に積極性が認められるのみならず、

警察官の犯罪捜査のための情報収集という公務執行に対する具体的な侵害を伴っていることが窺われるのであって、

原判決のいうように、右所為を単に偶発的なものであり、

その法益侵害の程度はさほど重大ではなく、

犯情も特に悪質ではないなどと評価し去ることができるものではありません。

そして、右所為について、

公務執行妨害罪として懲役6月執行猶予2年の有罪判決が確定していることも、

右所為の評価に当たり軽視しえず、

更に、Xには、前記一の5(略)のとおり、

本件所為以前に休職処分1回、それ以後に懲戒処分5回の処分歴があって、

右休職処分の対象となった所為は、

原審判示のように組合内部の統制にかかわるなどの事情があるにしても、

粗暴な犯罪行為であり、そのような所為によって起訴され、

休職となっていながら、本件所為に及んだという事実は、

考慮に値いするものであるし、右懲戒処分歴も、

本件所為以後のものであるとはいえ、無視することはできません。

右に述べたような諸事情を綜合して考えると、

原審の判示する他の事情及び本件免職処分の時期が本件所為の時点から隔たりのあること、

Yの職員で公職選挙法違反の罪により、確定の有罪判決を受けた者があるが、

その者が免職処分となった例はないことなどXの主張事実を斟酌し、

更に、免職処分の選択にあたって特別に慎重な配慮を要することを勘案しても、

なお、Yの総裁がXに対し本件所為につき免職処分を選択した判断が合理性を欠くものと断ずるに足りないものというほかはなく、

本件免職処分は裁量の範囲をこえた違法なものとすることはできません。

以上によれば、本件免職処分を無効であるとした原審の判断は、

国鉄法31条1項の解釈適用を誤った違法なものであり、

その違法が原判決に影響を及ぼすものであるといわなくてはなりません。

したがって、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れません。

【関連判例】


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