スポンサーリンク
就業時間外に職場外において、
ビラを配布した労働者が懲戒処分されたが、
当該処分は有効なのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、電力会社です。
Yに勤務するXらは、労働組合活動の一環として、
就業時間外に職場外において、
Yが計画している原子力発電所建設を批判するビラを配布しました。
Yは、当該ビラの内容が虚偽であり、
ビラの発行及び配布を行なったXらは、
Yの就業規則に所定する「会社の体面をけがした者」、
「故意または重過失によって会社に不利益を及ぼした者」に該当するとして、
Xらを懲戒処分(休職2か月1名、同1か月3名、減給半日3名)としました。
そこで、Xらは、懲戒処分の無効確認を求めて争いました。
スポンサーリンク
【判決の概要】
労働者が就業時間外に職場外でしたビラの配布行為であっても、
ビラの内容が企業の経営政策や業務等に関し事実に反する記載をし又は事実を誇張、わい曲して記載したものであり、
その配布によって企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなどの場合には、
使用者は、企業秩序の維持確保のために、
右ビラの配布行為を理由として労働者に懲戒を課することが許されるものと解するのが相当です(最高裁昭和53年(オ)第1144号同58年9月8日第1小法廷判決・裁判集民事139号393頁参照)。
右と同旨の見解に立ち、原審がその適法に確定した事実関係の下において、
Xらは、本件ビラの配布を行ったことにおいて、
Yの就業規則に定める懲戒事由の「会社の体面をけがした者」及び「故意または重過失によって会社に不利益を及ぼした者」に該当するものであるとした判断は、
正当として是認することができます。
所論違憲の主張は、
本件ビラの配布を理由として懲戒を課することは公序良俗に違反するとして原判決の法令違背をいうに帰するところ、
右懲戒権の行使は、Xらの表現の自由を不当に侵害するものとはいえず、
また、Xらの思想、信条自体を規制しようとするものでもないから、
公序良俗に反するものではありません。
原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができません。
【関連判例】
→「日本鋼管事件と職場外の行為」
→「小田急電鉄事件と懲戒解雇に伴う退職金不支給」
→「横浜ゴム事件と私生活上の行為」
→「関西電力事件と使用者の懲戒権」
→「国鉄中国支社事件と私生活上の非違行為」
→「国鉄小郡駅事件と私生活上の非違行為」
→「繁機工設備事件と企業の風紀を乱す行為」
→「全日本空輸事件と休職処分」