繁機工設備事件と企業の風紀を乱す行為

(旭川地判平元.12.27)

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妻子ある同僚と恋愛関係になった女子従業員が、

会社全体の風紀・秩序を乱し、

企業の運営に支障を来したことを理由に懲戒解雇されたが、

当該処分は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、管工事の施工等を業とする会社です。

Xは、昭和61年11月、Yに経理事務担当として採用されました。

Xは、妻子のある同僚男性と恋愛(不倫)関係を続けたことから、

Yは、会社全体の風紀・秩序を乱し、

企業の運営に支障を来したことを理由に、

昭和63年5月31日、Xを懲戒解雇しました。

そこで、Xは、懲戒解雇の無効を求めて争いました。

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【判決の概要】


Xが妻子あるAと男女関係を含む恋愛関係を継続することは、

特段の事情のない限りその妻に対する不法行為となる上、

社会的に非難される余地のある行為であるから、

Yの前記就業規則第23条2号所定の「素行不良」に該当しうることは一応否定できないところです。

しかしながら、右規程中の「職場の風紀・秩序を乱した」とは、

これが従業員の懲戒事由とされていることなどからして、

Yの企業運営に具体的な影響を与えるものに限ると解すべきところ、

前記認定のX及びAの地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業態等に照らしても、

XとAとの交際がYの職場の風紀・秩序を乱し、

その企業運営に具体的な影響を与えたと一応認めるに足りる疎明はありません。

Yは、XがAと共に一つのどんぶりからラーメンを食べるなど常軌を逸した行為に及んだため、

Yの従業員が右の行為等を見るに見兼ねて事務所に立ち入らなくなったし、

Aが必要な仕事をせずに事務所でXと一緒にいるようになった旨主張し、

〈証拠〉にはこれに沿う部分があるが、

これらはいずれも〈証拠〉に照らし措信できず、

他にYの右主張事実を一応認めるに足りる疎明はありません。

本件解雇は、懲戒事由に該当する事実があるとはいえません。

【関連判例】


「長野電鉄事件と企業の風紀を乱す行為」
「豊橋総合自動車学校事件と企業の風紀を乱す行為」
「日本鋼管事件と職場外の行為」
「小田急電鉄事件と懲戒解雇に伴う退職金不支給」
「横浜ゴム事件と私生活上の行為」
「国鉄中国支社事件と私生活上の非違行為」
「関西電力事件と使用者の懲戒権」
「中国電力事件と勤務時間外のビラ配布」
「国鉄小郡駅事件と私生活上の非違行為」
「全日本空輸事件と休職処分」