東海旅客鉄道事件と休職制度と職場復帰

(大阪地判平11.10.4)

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病気休職に入っていた労働者が、

職場復帰の意思表示をしたにもかかわらず、

休職期間満了をもって退職扱いとしたことは、

有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、旅客鉄道輸送を営む会社です。

Xは、昭和41年国鉄に、昭和62年、国鉄の民営化により発足したYに採用され、

Yにおいて、新幹線車両の検査業務に従事していました。

Xは、平成6年6月15日、脳内出血と診断され入院し、欠勤日数が180日を超えたため、

Yは、同年12月13日付で病気休職を発令しました。

平成9年11月27日、Yは、休職期間が3年を超えなお復職できないと判断し、

同年12月13日をもってXを退職とすることを決定しました。

そこで、Xは、復職の意思を表示しかつ現実に復職可能であるにもかかわらず、

3年の休職期間満了により退職扱いと決定されたことに対して、

就業規則、労働協約等に違反して無効であると主張し、

従業員としての地位確認及び未払い賃金の支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


労働者が私傷病により休職となった以後に復職の意思を表示した場合、

使用者はその復職の可否を判断することになるが、

労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、

休職前の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、

その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、

その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、

配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討し、

これがある場合には、当該労働者に右配置可能な業務を指示すべきです。

そして、当該労働者が復職後の職務を限定せずに復職の意思を示している場合には、

使用者から指示される右配置可能な業務について労務の提供を申し出ているものというべきです。〔中略〕

前記認定によれば、平成9年12月当時のXの身体の状態は、

〔1〕歩行については、多少のふらつきがあり、時間がかかるものの、杖なしに独立の歩行が可能であり、

〔2〕握力も左手に比べて右手の方が弱いものの、健常人のそれと大差がなく、ただ右手指の動きが悪いため文字を書くなどの細かい作業が困難であり、

〔3〕構語障害については、会話の相手方が十分認識出来る程度であり、

〔4〕複視はあるものの、その程度は軽く、たまには焦点が合うこともあるというものでした。

また血圧については、服薬により一定のコントロールが出来ており、

やや高めながらも安定しており、

健康管理を続ければ脳血管疾患の再発の危険性は少ない。

以上のようなY内での職務内容の変更状況や原告の身体の状況等を考慮した場合、

Xが就労可能であったと主張する各業務のうち、

少なくとも大二両における工具室での業務は就業可能であり、

Xを交検業務から右工具室での業務に配置替えをすることも可能であったとするのが相当です。〔中略〕

身体障害等によって、従前の業務に対する労務提供を十全にはできなくなった場合に、

他の業務においても健常者と同じ密度と速度の労務提供を要求すれば労務提供が可能な業務はあり得なくなるのであって、

雇用契約における信義則からすれば、

使用者はその企業の規模や社員の配置、異動の可能性、職務分担、変更の可能性から能力に応じた職務を分担させる工夫をすべきであり、

Yにおいても、例えば重量物の取り扱いを除外したり、

仕事量によっては複数の人員を配置して共同して作業させ、

また工具等の現実の搬出搬入は貸出を受ける者に担当させるなどが考えられ、

Yの企業規模から見て、Yがこのような対応を取り得ない事情は窺えません。

そうであれば、少なくとも工具室における業務についてXを配置することは可能であり、

Xについて配置可能な業務はないとするYの右主張は採用できないところです。〔中略〕

Xが休職期間中に復職ができないとしたYの判断は、

右誤った本件判定委員会の判断に基づくものであること、

前述のとおり当時のXの状態からして客観的には少なくとも工具室勤務は可能な状態であったこと、

前述のとおり、A所長らが、B医師からXの症状が固定し、

軽作業等可能であるとの判断も聞き、

また右のようなXの状態をみているにもかかわらず、

判定委員会の結論が出る以前において、

復職させる場所がないとの判断を先行させていることに照らし、

その判断に誤りがあるものといわざるを得ません。

従って、現実に復職可能な勤務場所があり、

本人が復職の意思を表明しているにもかかわらず、

復職不可としたYの判断には誤りがあると言わざるを得ないから、

YによるXに対する本件退職扱いは就業規則に反し無効です。

【関連判例】


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