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違法なセクハラを受けた労働者に対して、
使用者は、法的責任を負うことはあるのでしょうか。
【事件の概要】
Y1は、ブランドバックや洋品等のリサイクルショップです。
Y1に勤務していた女性従業員Xは、
上司であるY2及びY3からセクシュアルハラスメント行為を受けたため、
外傷後ストレス障害になりました。
さらに、Y1から不当に解雇されました。
そこで、Xは、精神的苦痛を被ったとして、
Y2、Y3及びY1に対し損害賠償を求めて争いました。
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【判決の概要】
Y2の前記(1)アの行為について検討するに、
これらの行為は、それだけでは違法性を有するとまでは認められない行為もあるが、
これらの行為がA町店という女性であるXのみ又はXとBしかいない小さな店内又は店の奥の従業員用の部屋で、
勤務時間中、反復継続して行われ、
Xが、これらY2の行為に対して抗議をしたり回避の行動をとったりしているにもかかわらず、
何度も行われたことからすれば、
その態様、反復性、行為の状況、XとY2の職務上の関係等に照らし、
客観的に社会通念上許容される限度を超えた性的不快感を与える行為であると認められます。
また、前記1(3)のとおり、Xは、
平成11年10月中旬ころから11月中旬ころまで、
A町診療所及びC病院に毎日ないし1日おきに、
体調の不調を訴えて通院していたことからすれば、
Xは、主観的にもY2の行為を不快なものと感じていたことが認められます。
以上からすれば、Y2の上記行為は、全体として、
職務環境においてXに性的不快感を与え、
Xの人格権を侵害するものとして、不法行為を構成するといえます。〔中略〕
Y2のセクハラ行為は、A町店内において、
同人及びXの勤務時間中に行われたものであるから、
職務を行うにつきなされたと認めることができます。
よって、Y1は、Y2の行為につき使用者責任を負います。
イ Y3の行為について
Y3の平成11年11月5日の行為は、
Y2のセクハラ行為についてXが相談をした勤務後の食事及び更に別の店での飲酒の後、
帰宅することになってXのマンションにタクシーで移動した後に行われたもので、
もはや実質的に職場の延長線上のものとは認められず、
また、XがY3が自分のマンションの前まで来ることを許したのはY3に対する感謝の気持ちもあったことによると認められるから、
Y3がXの上司としての立場にあることを利用した事情もうかがえず、
同行為は、Y3の個人的な行動であって、
職務を行うにつきなされたとはいえません。
また、その後の多数回にわたる電話や訪問も、
Xの勤務時間中のものもあるが、全体的に見れば、
単にY3がXと会って話すために、
職務と関係なく電話をかけたり訪問したりしたものであると認められ、
職務を行うにつきなされたとはいえません。
よって、Y1は、Y3の上記行為につき使用者責任を負いません。〔中略〕
使用者は、被用者に対し、
労働契約上の付随義務として信義則上被用者にとって働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を負っており、
セクハラ行為に関しては、
使用者はセクハラに関する方針を明確にして、
それを従業員に対して周知・啓発したり、
セクハラ行為を未然に防止するための相談体制を整備したり、
セクハラ行為が発生した場合には迅速な事後対応をするなど、
当該使用者の実情に応じて具体的な対応をすべき義務があると解すべきであって、
Y1もXに対し同様の義務を負います。
【関連判例】
→「金沢セクシュアルハラスメント事件とセクハラの定義」
→「東京航空会社派遣社員事件とセクハラの法的責任」
→「横浜セクハラ事件とセクハラの法的責任」
→「広島セクハラ(生命保険会社)事件と過失相殺」
→「福岡セクシュアル・ハラスメント事件と職場環境調整義務」
→「千葉不動産会社事件と強制猥褻的行為のセクハラ」
→「熊本セクハラ(教会・幼稚園)事件とセクハラ行為の反復継続」
→「岡山セクハラ(労働者派遣会社)事件と性的関係を迫る行為」
→「大阪セクハラ(歯材販売会社)事件と性的関係を迫る行為」
→「京都セクハラ(呉服販売会社)事件と噂の流布・不当な発言」
→「独立行政法人L事件と不穏当な発言(いわゆる下ネタ)」
→「三重セクシュアル・ハラスメント(厚生農協連合会)事件と職場環境配慮義務」
→「仙台セクハラ(自動車販売会社)事件と職場環境配慮義務」