横浜セクハラ事件とセクハラの法的責任

(東京高判平9.11.20)

スポンサーリンク










違法なセクシャルハラスメントを行った労働者が、

出向社員であった場合、

出向元と出向先の法的責任はどのようになるのでしょうか。

【事件の概要】


Y3会社の社員であるY1は、Y2会社への在籍出向を命じられ、

Y2において、事業部長兼営業所長として従事していました。

Y2に勤務していたXは、上司であるY1から肩をたたかれたり、

髪の毛をなでられるなどの行為や、

事務所内で抱きしめられたり、

無理やりキスされたり、等のセクハラ行為を受けました。

そこで、Xは、Yらに対して、損害賠償を求めて争いました。

スポンサーリンク










【判決の概要】


Y1のXに対する行為が不法行為を構成するかどうかについて検討します。

およそ、本件のように、男性たる上司が部下の女性(相手方)に対してその望まない身体的な接触行為を行った場合において、

当該行為により直ちに相手方の性的自由ないし人格権が侵害されるものとは即断し得ないが、

接触行為の対象となった相手方の身体の部位、接触の態様、

程度(反復性、継続性を含む)等の接触行為の外形、接触行為の目的、

相手方に与えた不快感の程度、行為の場所・時刻(他人のいないような場所・時刻かなど)、勤務中の行為か否か、

行為者と相手方との職務上の地位・関係等の諸事情を総合的に考慮して、

当該行為が相手方に対する性的意味を有する身体的な接触行為であって、

社会通念上許容される限度を超えるものであると認められるときは、

相手方の性的自由又は人格権に対する侵害に当たり、

違法性を有すると解すべきです。〔中略〕

右認定事実並びに前記第二及び前記一の各判示事実を前提として、

Y2会社の使用者責任の成否(争点2)について検討すると、

Y1は、Y2会社への在籍出向を命じられ、

電気事業部長兼横浜営業所長として、Y2会社の事業を執行していた者であり、

事業の執行に当たっては、Y2会社の指揮監督を受けていたというべきであるから、

民法715条の適用上は、Y2会社の被用者に当たるものと解されるところ、

前記一の4のとおりのY1のXに対する不法行為(第四の事実に係る行為は含まれない)は、

いずれも、事務所内において、営業所長であるY1によりその部下であるXに対し、

勤務時間内に行われ、又は開始された行為であり、

Xの上司としての地位を利用して行われたものというべきであるから、

Y1の右不法行為は、Y2会社の事業の執行行為を契機とし、

これと密接な関連を有する行為というべきです。

Y2会社は、Y1の行為は個別的な行為で職務と何ら関係なく行われたものである旨主張するけれども、

右に判示したようなY1の行為の外形から見て、

事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有する行為と判断すべきものである以上、

そのような行為に出た動機がY1の個人的な満足のためのものであったとしても、

そのことは右認定を左右するものではありません。

したがって、前記一の4において判示したとおり、

Xに対する不法行為を構成するY1の前示行為は、

いずれも同人がY2会社の事業の執行につき行ったものであるから、

Y2会社は、民法715条に基づき、

Y1の使用者として、損害賠償責任を負うというべきです。

次に、Y3会社建設の使用者責任の成否(争点3)について検討します。

民法715条にいう使用関係の存否については、

当該事業について使用者と被用者との間に実質上の指揮監督関係が存在するか否かを考慮して判断すべきものであるところ、

前記2において判示したとおり、

Y1はY2会社の事業の執行についてはY2会社の指揮監督を受けていたものであり、

前記1の認定事実によると、Y1は、Y3会社の社員であって、

Y3会社から給与の支給を受けていたものの、

Y3会社からは出向期間の定めなくY2会社に出向し、その間休職を命ぜられており、

Y3会社から日常の業務の遂行について指示を受けることはなく、

Y2会社がY1に対する業務命令権及び配転命令権を有していたということができます。

さらに、Y2会社は、Y3会社の100パーセント出資の子会社であるとはいえ、

独立採算制が採られ、Y3会社からの出向社員の給与に相当する金額は技術指導料の名目でY3会社に支払われていて結局Y2会社の負担に帰しており、

その売上げに占めるY3会社との取引の割合や全社員中の出向社員の比率からみても、

Y3会社とは独立した別個の企業として経営されていたものというべきであって、

Y2会社の事業がY3会社の事業と実質的に同一のものあるいはその一部門に属するものであったとみることもできないし、

特に、Y1が携わっていたA(編注・商品名)の製造販売は、

Y2独自の業務として行われていたものです。

右のような事情の下では、

Y3会社がY1に対する実質上の指揮監督関係を有していたと認めることはできません。

【まとめ】


出向先に、出向従業員の業務を指揮監督していたとして、

会社としての法的責任を認め、

出向元は、出向従業員の業務を指揮監督していたわけではないとして、

法的責任が否定されています。

【関連判例】


「金沢セクシュアルハラスメント事件とセクハラの定義」
「岡山セクハラ(リサイクルショップA社)事件とセクハラの法的責任」
「東京航空会社派遣社員事件とセクハラの法的責任」
「広島セクハラ(生命保険会社)事件と過失相殺」
「福岡セクシュアル・ハラスメント事件と職場環境調整義務」
「千葉不動産会社事件と強制猥褻的行為のセクハラ」
「熊本セクハラ(教会・幼稚園)事件とセクハラ行為の反復継続」
「岡山セクハラ(労働者派遣会社)事件と性的関係を迫る行為」
「大阪セクハラ(歯材販売会社)事件と性的関係を迫る行為」
「京都セクハラ(呉服販売会社)事件と噂の流布・不当な発言」
「独立行政法人L事件と不穏当な発言(いわゆる下ネタ)」
「三重セクシュアル・ハラスメント(厚生農協連合会)事件と職場環境配慮義務」
「仙台セクハラ(自動車販売会社)事件と職場環境配慮義務」