大阪セクハラ(歯材販売会社)事件と性的関係を迫る行為

(大阪地判平10.10.30)

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社長としての地位を利用して、

女性従業員とホテルの一室で2人きりでいる状況のもとで、

明らかに女性従業員をベッドに誘うような行動は、

セクハラとして認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、Yに平成7年10月2日、英語の翻訳及び貿易の担当として雇用された女性です。

Xは、平成7年10月23日から28日まで、Y代表者A(男性)と2人で、

香港に出張した際、ホテルにおいて、

Aはセフティーボックスの使い方がわからないと言ってはXを呼び寄せ、

Xの面前でズボンを下げ、キャッシュベルトの中から金やパスポートを出しました。

また、AはXと上海に滞在中の同年12月頃、

ホテルの部屋でXと2人になった際、ベッドに横になり、

ベッドの半分空いているところを手で叩き、Xに対し、

ここに横になれという仕草をしました。

さらに、Aは、上海において顧客を招待した席で、Xに対し、

「○さん、昨晩あなたはどうやって私の部屋に入ってきましたか。」と周りに聞こえるような声で言い、

Xを困惑させました。

その後、Xは上海に残り、Yの商品の販売活動を開始したが、

YはXが一時帰国した際に、

当初の条件にはなかった商品代金の支払いやノルマ達成義務をXに課する契約書への署名を求め、

上海で営業を再開した平成8年2月以降、YはXに対し、

商品代金の支払いや商品の供給などでXの活動を妨害したと主張しました。

Xは、Aによるセクハラ及びこれに関連する嫌がらせ、

上海での営業活動に関するいじめにより体調を崩し、

子宮内膜症と診断されたことから、

Aによる一連の行為は、Xに対する不法行為を構成し、

YはこれによってXが被った損害を賠償する責任があるとして、

慰謝料及び未払い賃金の支払いを求めて争いました。

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【判決の概要】


証拠(〈証拠略〉、X本人、Y代表者A本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば、

Aは、Xを伴って香港に出張した平成7年10月23日ころ、

セーフティボックスの開け方が分からないと言ってXをホテルの自室に呼び、

セーフティボックスを開けさせたこと、

その際、Xが在室しているにもかかわらず、ズボンのベルトをゆるめ、

ズボンをずり降ろして下着をあらわにし、

財布等を入れているキャッシュベルトを取り出したことが認められます。

しかしながら、右Aの行為は、

確かに、近くにいたXに不快感を与える行為であり、

無神経な行為として非難されるべきではあるものの、

このような性的不快感を与えるに過ぎない行為は、

これが不法行為と評価されるためには、

右行為が、Xに対し性的不快感を与えることをことさら意図して行われたものであることを要するというべきです。

しかしながら、右行為を、

Aがかかる意図をもって故意に行ったことを認めるに足りる証拠はないから、

これが不法行為を構成するとする原告の主張は理由がありません。〔中略〕

右Aの行為は、社長であるAが、女性であり、

かつ一従業員にすぎないXとホテルの一室で2人きりでいる状況のもとで、

明らかにXをベッドに誘うような行動をとったものであって、

社長と一従業員という両者の関係、

ホテルの一室で2人きりであったという状況等に鑑みると、

右行為は、Xに対し、

雇用契約上の地位を利用して性的関係を求めた行為として、

いわゆるセクシャル・ハラスメントに該当し、

不法行為を構成するというべきです。

Xは、上海滞在中であった平成7年12月中旬ころ、

顧客を交えての夕食の席上、

Aが「Bさん、昨晩あなたはどうやって私の部屋に入ってきましたか。」と回りに聞こえるような声で言ったと主張し、

これがXに対する不法行為を構成する旨主張します。

しかしながら、性的不快感を与える発言は、

常に不法行為となるのではなく、これが雇用関係上の地位を利用し、

ことさら性的不快感を与えたり、

あるいは性的関係を強要したりした場合に不法行為となると解すべきところ、

仮に事実がX主張のとおりであるとしても、

右発言がいかなる趣旨でなされたものか明らかでなく、

これが雇用関係上の地位を利用し、ことさら性的不快感を与えたり、

あるいは性的関係を強要したりする意図でなされた発言であるとまでは認められません。

したがって、右発言が不法行為を構成するとする原告の主張は採用できません。〔中略〕

以上のとおり、Aの前記2記載の行為は、

Xに対する不法行為を構成するというべきところ、

右は、Aがその社長としての地位を利用して行ったもので、

Yの職務に密接に関連する行為であるから、

民法44条、商法78条2項及び261条3項により、

Yは、右行為によりXの蒙った損害を賠償する責任があります。

そこで、Xの蒙った損害について検討すると、

Aの行為は、不法行為を構成するものの、

Aは手の動きでベッドに誘うような行為をしただけであって、

Xの身体に触れたこともなく、また、Xが誘いに応じないと分かると、

直ちに右行為をやめたことに照らすと、

その違法性の程度はそれほど高くないというべきであるから、

Xが蒙った精神的損害に対する慰謝料の額は、10万円が相当です。

【関連判例】


「金沢セクシュアルハラスメント事件とセクハラの定義」
「岡山セクハラ(リサイクルショップA社)事件とセクハラの法的責任」
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