東洋特殊土木事件と解雇の予告

(水戸地龍ヶ崎支判昭55.1.18)

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労働者が業務中に負傷したため、

休業している間に解雇予告がされたが、

この解雇予告は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、Yに昭和54年2月12日に雇用されました。

Xは、同年5月12日嫁働中、右足を骨折したため、

訴外長南病院及び同矢野医院へ通院加療をつづけました。

同年7月5日、負傷も癒えたので、

Yへ仕事の有無を電話で問合わせたところ、

Yからは仕事がないので休業して欲しいとの返事があり、

翌6日確認のため、あらためてYに対し右問合わせに対する文書による回答を求めたところ、

Yは、同年7月9日付でXを解雇する旨の予告、

及び予告期間中も就業を拒否する旨の文書を送付してきました。

そこで、Xは、解雇通知に基づく解雇の無効と賃金の支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


二 Xは、就労可能であるとの右申出をしておきながら、

就労可能でないときに解雇通知がなされたのであるからYの右解雇通知は労働基準法第19条に違反し無効であるといい、

Yはその主張のごとき理由でその通知は、

予告期間中の賃金を支払うことを含み(付記)解雇予告にとどまるから有効である旨争うのであるから以下この点を中心として検討します。

(一) まず、Xの負傷が何時治癒したか、

すなわち、Xが就労の申出をした時点か、診断書(乙第二号証)記載の時点かであるが、

成立に争いのない乙第二号証及びX本人尋問の結果を総合すれば、

Xは、前記5月12日負傷後、翌日訴外長南病院で受診したところ肉離れであり大したことはないと診断されたので、

その後2日間ぐらいYで就労したが痛みがあるため、

その後家で休み同5月18日に就労しYから東京までダンプを運転して資材を運び、

会社へ戻ってから他の従業員といさかいをし、自己の車で帰宅したが、

右いさかいが絡んでY主張(飲酒運転)の取調べがあったこと、

同5月22日になって足が腫れたので訴外矢野医院で受診した結果骨折(右下腿腓骨々幹部骨折)と診断され、

その後殆んど自宅で休養し(X本人は家で休んでいたと供述し、診断書には、通院加療をつづけたとの記載がある)ているうちに、

同7月5日になって治癒したので就労しようと思い、

X主張事実二のごとき電話をし、翌日問合せの文書を発し、

これに対し同7月9日Yからの応答文書を受取ったこと(右主張事実二は当事者間に争いがない)、

同7月14日右矢野医院へ行って治癒の診断をうけ同7月19日本訴を提起するに至った(本訴提起時点は本件記録上明らか)ことがそれぞれ認められるので以上の事実を総合するとXの受傷は、

遅くともXが就労の申出をした時点で完治していたもので、

診断書(乙第二号証)記載の7月14日は最終診断日を示すものに他ならず、

Xが就労申出同日に受診すればその日でも(また、その前でも)治癒の診断があったものと推認でき、

労働基準法19条の定めは、その定めの期間中における解雇の予告を禁ずる趣旨でなく、

同期間中の解雇そのものを禁ずる趣旨であると解せられるからこのことと後記解雇予告の内容等に照らすと右解雇予告は有効であるとするのが相当と認めます。

(二) ところで、何れも成立について争いのない甲第一号証、乙第四号証の一・二を総合すれば、

YからXへの解雇通知内容は、YはXが、

解雇予告期間中出勤をしなくともその間の賃金(30日分以上)を支払うことを約したものであり、

負傷治癒時期が診断書どおりだとすればその治癒後から予告期間を算定するという通知であることが認められ、

これによれば、右予告期間は30日以上(7月9日から8月14日まで)確保されておりXは、

右通知を受けた後直ちに他に就労することが可能だしそうしても別に30日分以上の賃金をYからうけうることができるという意味において再就職について有利に取扱われているというべく、

その他X本人尋問の結果によって認められるXが現実になした再就職時期、

前記争いのないXのYにおける就労期間、

前示認定のX負傷後のその言動と照らし併せるとYの右通知は、

Xを恣意的に、また、特別な害意をもつて再就職を妨げようとしてなしたものではなくXも物心何れの面でも右通知によって特別な不利益(勿論他へ再就職の要があるという意味における不利益はある)を受けたことはないと認められ、

右通知を不当とする事由は見当りません。

三 以上の次第で、前記Xに対するYの解雇(予告)通知は有効であるのにXの本訴請求は、

これを無効とし、前示Yが通知内容としている30日分以上の賃金受領を拒否し、

これとは別異の賃金支払請求等をしているのであるからそれは失当です。

【労働基準法19条(解雇制限)】


使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

◯2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

【労働基準法20条(解雇の予告)】


使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

◯2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

◯3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

【まとめ】


労働基準法19条の定めは、

その定めの期間中における解雇そのものを禁ずる趣旨であり、

解雇の予告を禁ずる趣旨ではありません。

【関連判例】


「細谷服装事件と解雇の予告」
「セキレイ事件と解雇予告手当」
「学校法人専修大学事件と打切補償」