セキレイ事件と解雇予告手当

(東京地判平4.1.21)

スポンサーリンク










会社に懲戒解雇された労働者が、

解雇予告手当の支払を求めたが、

当該請求は認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Xは、平成2年5月にYに入社しました。

Xは、入社後まもなく社内や社外において、

Yの経営について非難や中傷をし、

さらに、Yの従業員でありながら、

Yと全く関係のない暖炉やログハウスをYの見込み客に売り込み、

また、顧客からの入金分を横領する等の背任行為を行いました。

そのため、Yは、同年7月21日に、

Xに対して、懲戒解雇の意思表示を行いました。

そこで、Xは、解雇予告手当等の支払いを求めて争いました。

スポンサーリンク










【判決の概要】


X本人尋問の結果によれば、Xは、

平成2年7月21日に、会社の上司から「おまえは首だ」といわれたことが認められ、

(証拠略)によれば、Xは右同日Y主張趣旨に添う内容の書面を会社に提出していることが認められます。

そして右事実からすれば、右上司による意思表示は、

Y主張の事実を理由とする懲戒解雇の意思表示であったことが認められます。

しかしながら、(証拠略)及びX本人尋問の結果によれば、

Xは、(証拠略)の書面を作成する直前に、

Yの専務や部長等数人から殴る蹴るの暴行を受け、

頚部挫傷、左前腕・左上腕・右下腿打撲、右第五指打撲による全治10日の傷害を負わせられ(後に、左眼も打撲を受けていることが判明し、さらに平成2年8月29日からは頚椎捻挫、腰部挫傷、右小指挫傷で通院治療を受けている。)たうえ、

右趣旨の内容の書面を書かなければ帰さないと言われたためにやむを得ず意に反して作成したものであることが認められ、

右事実からすると、右書面の内容には信用性がなく、

他にY主張の懲戒事由の存在を立証する証拠はありません。

そうであるとすれば、Yに懲戒解雇権が発生しているとは認められず、

したがって、Yの懲戒解雇の意思表示は無効であり、

これを通常解雇の意思表示と見るにしても、

解雇予告手当の支払がない以上解雇の効力は生じないことになるが、

Yにおいて雇用関係を即時に終了させる旨の意思を有していたことは明らかであるとともに、

Xにおいても雇用関係の即時終了の効力が生じること自体は容認し、

解雇予告手当の支払を求めているものであるから、

右意思表示によってXとYとの間の雇用関係は即時に終了し、

YはXに対し解雇予告手当を支払うべき義務が生じるものと解するのが相当です。

そして、前述のように、Xの賃金は月額金40万円であったというのであるから、

労働基準法20条1項により、

YはXに対し金40万円の解雇予告手当を支払うべき義務があるというべきです。

【労働基準法20条(解雇の予告)】


使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

◯2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

◯3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

【関連判例】


「細谷服装事件と解雇の予告」
「東洋特殊土木事件と解雇の予告」
「学校法人専修大学事件と打切補償」