三井リース事件と能力不足を理由とする解雇

(東京地決平6.11.10)

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使用者は、労働者に対して、

数回にわたる配置転換や研修の機会を与えたが、

他の部署に配置転換して業務に従事させることはもはやできないと解雇したが、

当該解雇は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、リース事業を営む会社です。

Yに採用されたXは、採用後、

国際営業部、海外プロジェクト部及び国際審査部に順次配転されました。

しかし、Xは、いずれの部署においても業務に対する理解力が劣り、

自己の知識・能力を過信し、

上司の指示を無視して思いつきで取引先と折衝したり、

支離滅裂な発言をしたため、実質的な業務から外さざるを得なくなりました。

その後、Xは、国内法務の業務を希望したため、

日常業務を免除して3か月間法務実務の研修の機会を与えたが、

その結果も不良で法務担当者としての能力・適性に欠けたため退職勧奨をしたところ、

Xは、これを拒否したため、解雇しました。

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【判決の概要】


右疎明事実によれば、Xには就業規則25条3号に該当する解雇事由が認められるというべきです。

Xは、配置転換することにより活用の余地が十分にあるのであるから、

これをせずにYがXを解雇したのは許されないと主張するけれども、

前記のとおり、Yは、Xと雇用契約を締結して以降、

国際営業部、海外プロジェクト部及び国際審査部に順次配置転換し、

担当業務に関するXの能力・適性等を判断してきたものであり、

特に国際審査部においては、Xが国内法務の業務を希望したことから、

Xの法務能力及び適性を調査するため、約3か月間、日常業務を免除し、

法務実務に関する研修等の機会までも与えたものの、

その結果は法務担当者としての能力、適性に欠けるばかりでなく、

業務遂行に対する基本的姿勢に問題があると評価されたことから、

Xをさらに他の部署に配置転換して業務に従事させることはもはやできない、

とのYの判断もやむを得ないものと認められます。

また、Xは、自分がこれまでの部署で十分に適応できなかったのは、

Yが職場環境の整備を怠ったこと、

特にXに対する同僚の村八分行為や嫌がらせとそれに対する上司の不適切な対応に起因する職場不適応によるものであると主張するけれども、

仮にXに対する同僚の村八分行為や嫌がらせの事実があったとしても、

前記のとおりそのもともとの原因はX自身の言動等にあるものと認められるうえ、

そのような事実とXの業務に関する能力欠如との間に因果関係があるとの的確な疎明もないのであるから、

これらの事情が解雇権の濫用を基礎づけるものとみることは到底できません。

なお、Xは、解雇手続の瑕疵を主張するので、検討します。

解雇は雇用契約を終了させる使用者の一方的意思表示であるから、

いかなる手続によって解雇するかは、

就業規則等に特段の定めがない限り使用者の裁量に委ねられているものと解すべきところ、

本件においては、解雇を規定したYの就業規則25条が、

「次の各号の一に該当する場合は、会社は三〇日前までにその旨を予告するか又は解雇予告手当を支給して職員を解雇することができる。但し、第三号に該当する場合については、会社はその都度設ける委員会の意見を徴して決定する」と定めているが、

同就業規則には右委員会の構成員や審理手続等について具体的に定めた規定は存しません(書証略)。

したがって、就業規則25条が定める委員会の構成や審理手続等は債務者の裁量に委ねられているものと解すべきであり、

その委員会において被解雇者であるXや労働組合の組合員に弁明の機会を与えなければならないものではないというべきです。

本件において、Yは、平成6年4月26日に代表取締役専務取締役、

総務部長、経理第二部長、国際審査部長、国際事業本部長、審査部副部長、

人事部長、人事部長代理が出席する解雇検討委員会を開催してXの解雇問題について検討し、

同委員会がXの解雇はやむを得ないと判断したことを尊重してXを解雇したことは前記のとおりであるから、

その手続に何ら瑕疵はないというべきです。

【関連判例】


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