海空運健康保険組合事件と能力不足を理由とする解雇

(東京高判平27.4.16)

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上司の度重なる指導、また、配置換えを行ったが、

勤務姿勢に改善がみられなかった労働者が解雇されたが、

当該解雇は有効なのでしょうか。

【事件の概要】


Y健保組合は、海空運事業者のを対象として健康保険の仕事を行う法人です。

Yの職員数は、事務長を含め常時15名前後であり、

Xは、平成5年4月1日、期間を定めずYと労働契約を締結し、

E課に配属されました。

平成13年10月1日にF課課長に昇進し、

同16年4月1日にはE課に配属され同課課長なって以降、

他課の業務支援を部下である課員に命じたことやシステム開発の仕様のあり方をめぐって部下である課員と対立を深め、

その信頼を損なうことがあり、管理業務を適切に行えない事態に至りました。

Yでは、同17年5月1日付けで、XをFグループ・審査課に異動させ、

レセプト業務、海外療養費の決定等を主な業務とし、

課長職から一般課員扱いとしました。

しかし、この頃からレセプト業務に関してミス記載や混乱がみられる、

海外療養費に係る事務が滞留することが著しくなり、

格別問題がなかった16年度までとは異なり、

業務の過誤や支障が生じるようになりました。

同20年には傷病手当金等の現金給付決定を行う業務に変更になり、

Xもその業務に集中的に取り組んだが、

事務処理の不確実性は克服できませんでした。

同22年には被保険者からの問い合わせに的を射た回答をせずクレームを生じさせたため、

別の業務に担当替えとなったものの過誤、業務遅滞が見られ、

結局、Yは、平成24年4月30日付けでXを解雇しました。

そこで、Xは、労働契約法16条に照らして違法・無効であるとして、

労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、

及び賃金相当額等の支払を求めて争いました。

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【判決の概要】


Xは、上司の度重なる指導にもかかわらずその勤務姿勢は改善されず、

かえって、Xの起こした過誤、事務遅滞のため、

上司や他の職員のサポートが必要となり、

Y全体の事務に相当の支障を及ぼす結果となっていたことは否定できないところです。

そして、Yは、本件解雇に至るまで、

Xに繰り返し必要な指導をし、また、配置換えを行うなど、

Xの解雇を継続させるための努力も尽くしたものとみることができ、

Yが15名ほどの職員しか有しない小規模事業所であり、

そのなかで公法人として期待された役割を果たす必要があることに照らすと、

YがXに対して本件解雇通知書を交付した平成24年3月30日の時点において、

Xは、Yの従業員として必要な資質・能力を欠く状態であり、

その改善の見込みも極めて乏しく、

Yが引き続きXを雇用することが困難な状況に至っていたといわざるを得ないから、

Xについては、Yの就業規則25条7号所定の「その他やむを得ない事由があるとき」に該当する事由があると認められます。

そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、

社会通念上相当であると認められるから、有効であるというべきです。

【関連判例】


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