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労働者の個別の同意を得ることなく、
就業規則において業務上の都合で、
自由に転籍を命じうるような事項を定めることはできるのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、各種捕鯨砲、猟銃等の製造、販売等を業とする会社です。
Xは、昭和42年4月1日、Yに雇用されました。
Xは、銃床の磨き及び塗装作業に従事していたが、
Yは、Xに対し、昭和51年2月21日付で、
Bへの転籍命令を発しました。
しかし、Xは、これを拒否したため、
Yは、Xに対して、同月27日、解雇の意思表示をしました。
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【判決の概要】
Yでは従来転籍は従業員の承諾の下に行われ、
それに副った労働協約条項も存在していたところ、
Yは右協約の一方的な廃棄通告をして就業規則44条で転籍に関し従業員は正当な理由がなければこれを拒むことができないと定めたのであるが、
転籍とは、元の会社を退職することによってその従業員としての身分を失い、
移籍先の会社との間に新たに雇傭関係を生ぜしめることで、
元の会社との関係においていわば新労働契約の締結を停止条件とする労働契約の合意解除に相当するものであるから、
従業員はその合意解除契約締結の自由が保障されなければならないのです。
すなわち、転籍は、移転先との新たな労働契約の成立を前提とするものであるところ、
この新たな労働契約は元の会社の労働条件ではないから、
元の会社がその労働協約や就業規則において業務上の都合で自由に転籍を命じうるような事項を定めることはできず、
従ってこれを根拠に転籍を命じることはできないのであって、
そのためには、個別的に従業員との合意が必要であるというべきです。
しかるに、Yはもともとそのような内容の労働協約の定めがあったものを一方的に従業員に不利益に変更したもので、
その変更自体無効といわざるをえないが、
改正後の就業規則44条に基づき転籍を命じることもできないといわざるをえません。
したがって、右条項にもとづく転籍命令は無効です。
無効な転籍命令に従わないことを理由の本件解雇も無効です。
【関連判例】
→「三和機材事件と転籍」
→「京都信用金庫事件と移籍出向」
→「日立製作所横浜工場事件と転籍」
→「日立精機事件と転籍」
→「生協イーコープ・下馬生協事件と転籍」