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労働者の就労請求権が認められる場合はあるのでしょうか。
【事件の概要】
Yは、飲食店を営む会社です。
Xは、昭和43年3月25日にYに調理人として雇用されました。
Xは、同年5月上旬に、Yの代表者が経営する別の飲食店が人手不足のため、
同店で働くよう命ぜられたが、これを拒否しました。
Yは、同年5月10日、Xが業務上の指示命令に不当に反抗し、
職場の秩序を乱し、Yの業務を妨害したとして、
Xを解雇する旨申し渡しました。
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【判決の概要】
就労請求権の存否について判断するに、労働契約においては、
労働者は使用者の指揮命令に従って一定の労務を提供する義務を負担し、
使用者はこれに対し一定の賃金を支払う義務を負担するのであるから、
一般的には労働者は就労請求権を有しないと解されるが、
労働契約等に特別の定めがある場合又は業務の性質上労働者が労務の提供について特別の合理的な利益を有する場合はこれを肯認するのが相当です。
これを本件についてみると、Xが調理人(コック)であることは前記のとおりであり、
調理人はその仕事の性質上単に労務を提供するというだけではなく、
調理長等の指揮を受け、調理技術の練磨習得を要するものであることは明らかであり、
X本人、Y代表者各尋問の結果によれば、
調理人としての技量はたとえ少時でも職場を離れると著しく低下するものであることが認められるから、
Xは業務の性質上労務の提供につき特別の合理的な利益を有する者と言って差支えなく、
XはYに対し就労請求権を有するものと考えます。
【まとめ】
労働契約等に就労請求権を肯定する特別の定めがある場合や、
業務の性質上、労務提供について、
労働者が特別の合理的利益を有する場合には、
例外的に就労請求権が認められます。
【関連判例】
→「読売新聞社事件と就労請求権」
→「富国生命保険事件と就労請求権」
→「日本海員掖済会塩釜病院事件と就労請求権」