リコー(子会社出向)事件と退職勧奨拒否

(東京地判平25.11.12)

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使用者からの退職勧奨を拒否した労働者に対して、

子会社へ出向を命じた場合、

当該出向命令は認められるのでしょうか。

【事件の概要】


Yは、 複合機の製造・販売等を行う会社です。

Yは、平成23年にグループ全体で約1万人の人員削減を行う旨を発表し、

Y及びYグループ会社で1600人程度(Y本体では500人程度)削減することを目標に、

希望退職者を募集する旨を発表しました。

Yは、X1に対しては3回、X2に対しては4回にわたり退職を勧奨したが、

Xらは応じませんでした。

Yは、平成23年9月10日付でX1、X2に対し、

子会社へ出向させる旨の出向命令を発しました。

そこで、Xらは、本件出向命令に基づく出向先において勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認、

Xらへの退職強要行為又は退職に追い込むような精神的圧迫の差止め、

並びに労働契約上の信義誠実義務違反及び不法行為に基づく損害賠償を求めて争いました。

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【判決の概要】


第17次中計の大規模な人員削減方針が公表されたわずか半月後に本件希望退職が発表されたこと、

本件希望退職の公表後間もなく、

余剰人員とされた従業員の面談が開始され、

結果としてその9割近くが本件希望退職に応募し、退職していること、

Xらの面談では、その当初から、

本件希望退職に基づく退職金の計算結果が具体的に示され、

本件希望退職への応募を継続して勧められていること、

Xらが断るとさらに面談が重ねられ、

B及びCが本件希望退職への応募を数度にわたって勧めた末に本件出向命令が発令されたことは、

認定事実記載のとおりです。

これらに加え、人選担当者であるB及びCが、

本件出向命令の内示に至るまでXらの具体的な出向先及び業務内容を知らなかったこと等も併せ鑑みれば、

余剰人員の人選は、事業内製化を一次的な目的とするものではなく、

退職勧奨の対象者を選ぶために行われたものとみるのが相当です。

リコーロジスティクスにおける作業は立ち仕事や単純作業が中心であり、

Xら出向者には個人の机もパソコンも支給されていません。

それまで一貫してデスクワークに従事してきたXらのキャリアや年齢に配慮した異動とはいい難く、

Xらにとって、身体的にも精神的にも負担が大きい業務であることが推察されます。

以上に鑑みれば、本件出向命令は、

事業内製化による固定費の削減を目的とするものとはいい難く、

人選の合理性(対象人数、人選基準、人選目的等)を認めることもできません。

したがって、Xらの人選基準の一つとされた人事評価の是非を検討するまでもなく、

本件出向命令は、人事権の濫用として無効というほかありません。

本件出向命令の内容及び発令に至る経緯は、認定事実記載のとおりであり、

リコーロジスティクスにおける業務内容は、前記のとおり、

Xらにとって身体的、精神的負担の大きいものであることは否定できません。

しかし、リコーロジスティクス自体、

半世紀近くの歴史を持つ会社であり、

事務機器の製造、販売及び保守を基盤事業とするY社グループの事業を支える主要会社の一つです。

Xらが行う業務は、リコーロジスティクスにおける基幹業務であること、

就業場所も東京又は神奈川であり、

Xらの自宅からは通勤圏内であること、

本件出向命令後、Xらの人事上の職位及び賃金額に変化はないこと、

結果として事業内製化の一端を担っていること等も併せ鑑みれば、

本件出向命令が不法行為にあたるとはいえません。

【関連判例】


「下関商業高校事件と退職勧奨」
「東京女子醫科大学事件と退職強要」
「日本アイ・ビー・エム事件と退職勧奨」
「鳥屋町職員事件と退職勧奨」